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2015/10/27

ボツネタ 18

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すっかり寒くなり、近くの温泉郷では美しい紅葉が見られるようになりました。

さて、本日はこちらのブログに“ボツネタ”をアップです。
誤字脱字等がございましたらお許し下さい。

帰りのタクシーの中で、彼女は独りクスクスと笑う。
車窓の外は深い夜の帷に包まれ、時々映し出される自身の嬉しそうな笑顔が、満たされた心を更に豊かにした。
楽しかったメンバーとの飲み会。
以前は定期的に行われていたが、それぞれの忙しい日々の積み重ねが少しずつ距離を離していった。
けれど今夜は珍しい人がメンバーを誘い出し、一人も欠けることなく集めて行われた。
さすが、倶楽部のリーダー。
昔から彼が一声あげると、誰も逆らうことなくついて来る。
最初彼女は、誘いがあった時は仕事が立て込んでいた所為もあって行き渋ったが、自分以外全員参加と聞いてしまってはと何とか予定を入れた。
以前から利用していたダイニングバー。
扉を開けると、皆の笑顔が彼女を振り返る。
それで全てが元に戻る。
グラスを傾けながら近況を語り合えば、互いのわだかまりも謝らなければいけなかったことも、何もかもが消えてしまう。
全て、小さな過去の出来事で終えてしまえる。
やっぱり、気心知れた仲間なのだ。
店を何軒か変え、仲間が一人ずつ消えて行くと、彼女は誰かと二人に取り残されるのを恐れて空車タクシーに片手を挙げた。

バイバイ、またね。

ああ、またな。

さよなら。気を付けて。

おやすみ~。

・・・・・

彼女はタクシーを停めた手を、今度は仲間へと振る。
素早く乗り込み、気持ちが変わらぬよう前を向いて運転手に行き先を告げた。
タクシーは滑るように走り出し、フロントガラスは遅い時間でもまだ華やかな通りを映し出していた。あの角を曲がるまでは・・・
角を曲がれば、街灯が一気に少なくなり人通りもすらも少なくなる。
だから彼女は目を瞑った。
そうすると、身体中に酔いが回って行くのが分かる。
ああ、楽しかった。本当に楽しかった、と彼女は思う。
こうして笑顔でいられるのは仲間があるからであって、またバラバラに明日を迎えても頑張ることができる。
独りでも、頑張れる。
この仲間との時間が、これからの活力。
そして・・・普段に戻れる幸せ。
そう感じることができるのは、やはり仲間と言う安住の地があるからこそなのだ。



けれど、本当は伝えたいことがあった。
伝えたい人がいた。


“あの時は、ごめん。ヘタなことを言って、ごめん。
今なら、うまく言えると思うんだ。

あたしも、大好きなんだよ”

高等部を卒業するちょっと前、慣れ親しんだ生徒会室で倶楽部のリーダーからこれからのあたし達について言われたんだ。

“これからも変わらずに会って行きたいって思ってるんです”

“変わらない距離から少しずつでいい、二人の時間として育んで行きたいんです”

その時のあたしはまだ子供だったから、そいつの言っている意味を理解してあげることができなかった。
大好きな気持ちがあったけど、遠回しの言い方が、何だかバカにされているようで。
もちろんバカだから、思わず反発しちゃったんだよね。

“相変わらずわけ分かんないよ。あたし、お前のそんなとこキライ!”

でも、今なら、そんな自分を含めて“自分”だって思えるよ・・・



目を開くと、見覚えのある風景が入って来る。
暗くても、自分の住む場所は分かる。
タクシーを裏門に回して降りると、冷たい風がシャツの胸元とスラックスの足元に入り込んで酔いが覚めそうになる。
早く熱いシャワーを浴びたいと思いながら門のインターフォンのボタンを押そうと、その細い指先を伸ばした時、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
その方を振り向いて立っていたのは、あの日、彼女を困らせた男だった。

「悠理がタクシーに乗って、すぐに追いかけました。間に合って良かった」
「清四郎・・・」
「今まで、何回もこうして集まって来たけれど、まだその機会じゃないって思えてね」
「うん」
「でも今夜は、違うように思えて。悠理を見てると、大丈夫だなって感じて。
だから追いかけました」

彼女は応えずに、じっと彼を見つめている。
夜風は、完全に二人の酔いを覚ます。
彼を見つめる彼女が、ほんのちょっと首を傾げる。
そうして彼もまた、ちょっと不安になった。

「分かりやすい言葉で伝えましょう」

でも彼女は、首を振って彼に近付き、彼のスーツにそっと触れて言った。

「ううん、清四郎。あたし分かるよ、何が言いたいのか。
多分、間違っていないと思うから言い直さなくてもいいんだ」
「悠理?」
「この距離から、始めるのも悪くないって思う」
「ええ」
「これから、二人の時間を育むので、うまく行くんじゃないかな」
「もちろん」

けれど二人の距離はグッと近付く。

「あの時は、ごめん。ヘタなことを言って、ごめん」
「とんでもない、悠理。僕はそんなところも含めて、悠理だって思ってるんです。
そんなところが、大好きなんですから」

二人は顔を合わせて微笑み、優しくハグをする。
それから風邪を引かないようにと、家に入るためにインターフォンのボタンを押した。

拍手[17回]

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コメント

1. なるほどーーー

(^^)そういうことだったんですねぇ。
清四郎と悠理のこの先は・・もちろん幸せですよね!
タクシーで追いかける清四郎がかっこいい。二人の距離が自然近づいたのも良いです!

今回も素敵なお話ありがとうございました

うつき様

いつもコメントをありがとうございます!

はい、今回はちょっとだけドラマ風に清四郎に追いかけてもらいましたよ♪
好きな人にタクシーで追いかけられたら、素敵ですよね~♪
もちろん、この先はハッピーエンドです!

いつもありがとうございます!!

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