こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
ご訪問ありがとうございます。
拍手・ランキングへのクリックもありがとうございます。
なんだかんだと書けました。
この調子で普段通りに~と思ってはいますが、
変わらず諸々の事情はありまして・・・
まずは、アップできる時はアップしたいと思っています。
時間がかかる時もありますが、それでも連載は完結させたい!と希望を持って。。
小出しではありますが(いつもですが)、頑張ります!!
連休を利用した小旅行を悠理が提案した。
彼女の両親が所有するリゾート地である温泉郷で、季節外れの観光客がまばらであるが為にできた事だ。
けれど同じ日に僕は同好会の定例総会があり、できればそちらを優先したいと申し出た。
「総会は別の日に延期できない?」
「ああ、悪いけど」
「遅れてもいいよ。終わり次第来てよ。ううん、迎えの車を回すからさ」
あの彼女の部屋で起こった事がまだ二人の間には鮮明ではあったが、彼女にしては大人の対応であるが為に普段を装った。
あるいは彼女には、単純な狎れ合いとして収めたのかも知れない。
「でも・・・」
「ねぇ、お願い。一人でもメンバーが欠けるとつまんない」
結局彼女に強引に誘われ、行きは僕だけ遅れ(それは時間にしては半日を越える程)る事を承諾してもらった。
正直に言えば、僕はその小旅行に参加はしたくなかった。
あの出来事から日はまだ浅く、それにしても普段通りの彼女の接し方に苦痛を覚えない訳ではないからだ。
彼女のそのような対応を僕は不自然に感じ、また、僕への想いが冷めたからだと推測された。
せめて僕自身の気持ちが通常に戻るまで、それまではそっとしておいて欲しかった。
あからさまな僕の言動は、きっとメンバーも不審に思うだろう。
だから僕は、こうして遅刻してまで普段を装わなくてはならなかった。
同好会の会場に迎えに来たのは悠理と魅録だった。
後部座席に二人は並んで座っており、僕が乗車する時に悠理が助手席に移った。
車は温泉郷の観光用個人タクシーで、体の大きな僕と魅録が隣り合っては窮屈だった。
「名輪さんが迎えに来ると思った」
僕は助手席の悠理に言う。
「今日は父ちゃんの用事。だから行きもみんなして電車を乗り継いだんだ」
「それは大変でした。僕だけ失礼」
「ううん、大丈夫。あたしは楽しかった。魅録は?」
「旅行の醍醐味だろ。乗り継ぎって。でもしんどかった」
二人は笑った。
「けれどわざわざ二人で?行き先だけ知らせてもらって、僕がこちらからタクシーで向かっても良かったのに」
そのように魅録に向かって言うと、彼は優しい視線を悠理に送った。
「悠理が一緒に行こうって。一人だと心細いだろうって」
一人で心細いとは、僕なのか、悠理がそうであるのか疑問だった。
そうして悠理を見ると、彼女もそっと魅録に目くばせしたように思えた。
ギュッと胸が締め付くような痛みを覚えた。
温泉宿に着くと僕の分の夕食が部屋に用意されていた。
給仕は野梨子がやってくれ、他のメンバーはそれぞれに時間を過ごしていた。
「お風呂はまだですの?」
「ええ。皆は?一度は入ったでしょう」
「入りましたわ。薬湯が幾つかあって楽しめましてよ。
食事が終わったら入っていらして」
「そうですね。魅録か美童と行ってきます」
「あら。でも、魅録は」
「魅録がどうかしました?」
「悠理と、さっきちょっと出かけましたわ。町へ遊び行くと言って。
すぐには戻りませんでしょ」
胸に、また痛みが走る。
「シーズンオフに、何かありますか?」
「さあ。ゲームセンターとか、そんなところですわよ、きっと」
温泉宿は鄙びた趣の茅葺き屋根で風情があったが、内装はしっかりとしていて、最近になってリフォームしたような雰囲気であった。
ロビーは広々としていて、幾つかのソファセットがあり、前面に広がったガラス張りの向こうには日本庭園がライトアップされて見えた。
朝になれば、じっくりと散策できそうだ。
僕はフロントで洗面用具を買い求めようと近付いた時、名前を呼ばれて振り返った。
そこには悠理が外出先から戻ったと見えて、いつも通りのカジュアルな格好をして立っていた。
「戻ったんですか。魅録は?」
「部屋に行った。今そこで見かけたから。どうしたの?」
「洗面用具を忘れました。売店が閉まってましてね。ここで」
「それならわざわざ買わなくっても。予備はあるかれら、それを使うといい」
「そうですか。それはありがたい」
彼女はロビーのカウンターでジュースでも飲もうと誘った。
けれども僕は魅録との事が気にかかり、その誘いを断った。
「さっき食事をしたばかりでね。失礼。魅録を呼ぼうか?」
「ううん。ちょっと喉が渇いたから。自販機で買うさ」
彼女は当たり前のように僕の横に並び、明日の予定について話始めた。
先程の観光タクシーを使って遊園地に行こうと言う。
その後別の温泉に入浴だけ行くか、野梨子と意見が分かれているらしい。
「まあ、それぞれに分かれても良いんじゃないですか?
どうせ悠理と魅録は、アミューズメント的な場所に行きたいでしょ。
僕が野梨子に付き合いますから。魅録と楽しんだら良い」
僕は素っ気なく言う。悠理はふうんとだけ言って、僕の傍から離れて行った。
翌日になって朝食の席でそれとなく野梨子に今日の予定はと訊くと、皆で遊園地に行くと言う。
その後はと更に訊くと、やはり皆で別の温泉に日帰り入浴をしに行くと告げた。
「おや、悠理と意見が分かれていると聞きました。それで良いのかな」
「せっかくだから皆と一緒が良いと、悠理が言いましたの。
確かに分かれると、まとまらなくていけませんわ」
「悠理にしては珍しいな。もっと体を使って遊びたいんじゃないかと」
「私に気を遣ってくれたんですのよ、きっと。仲間思いですもの」
野梨子は意味深長に微笑む。
僕はバイキング式でメニューを選んでいる悠理へと視線を向ける。
彼女は魅録と楽しそうにトレーに料理を並べていた。