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charm anthology

こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。

2013/12/17

the eternal triangle lament The last chapter

ご訪問ありがとうございます!

本日で連載終了です。
ナンだか遠回り・・・ご了承下さいませ(笑)。

また「彼女の恋を知った時」も、時間はかかりますが続きを描こうと思います。
今回の連載が終わってからお返事をした方が良いと考え遅くなりました。
相変わらずの似たような展開になると思いますが、こちらもご了承下さい。。

















ショッピングモールの人込みを掻き分けると、待ち合わせ場所に悠理が不安そうな表情で立っていた。
意外にも彼女が約束の時間通りに到着しているのを知り、僕は思わず口元に笑みを零してしまった。
彼女は僕の存在に気付き、照れ臭そうに右手を上げる。


「大雪でも降るんじゃないですかね。悠理が僕より先に着いてるなんて」
「違うもん。本当は遅刻しそうだったけど、名輪がここまで車を飛ばしてくれたんだもん」
「あはは、やっぱりね。そうだと思った」


今日は数日後に行われるクリスマスパーティの買出しに来た。
僕と悠理は会場の飾り付け係。
クリスマスツリーを飾るデコレイショングッズを買い揃えるのだ。
けれどモールは買い物客で溢れ、ゆっくりと詮索すらできない。


「ちょっと休憩しようよ。お腹空いちゃったよ」


そう訴える彼女の空腹なお腹を満たす事もできない程混雑している。
結局、間に合わせのようなグッズを揃えるより、剣菱邸にあるクリスマスグッズを借りた方が良いだろうと僕が結論を出した。
そう決まると後は早くこの場所から逃げ、ゆっくり寛げるレストランで昼食を取ろうと言う事になる。
混雑するショッピングモールを出て直ぐにタクシーを捕まえる。
ちょっと二人で思案した後郊外にあるレストランに決め、運転手に簡単な住所を伝える。
渋滞する道路が郊外に出るまで思った程時間がかからなかったが、ランチタイムまでに間に合うのか、
悠理には重大な問題のようだった。
魅録と話したあの学校帰りから、ずっと心に重く伸しかかっている今後の彼女との関係について真剣に悩んでいると言うのに。
彼女を見ていると、そんな事すら簡単に思えてくる。
悠理へ交際を申し込む事についてあの日から僕は真剣に考えていた。
けれど魅録と別れたばかりの彼女に対して、それは正しい選択とは思えなかった。
例えディセンシーの問題を別にしても。僕個人として。
確かに僕は悠理を大切に想っている。それは何時か愛に変わるものと信じている。
そして何より、交際を申し込んだとして、彼女はそれを快諾するであろう事も知っている。
それでもなお、僕は決心がつかなかった。


「ねぇ、清四郎ってば!」
「・・・え?」


タクシーは既にそのレストランに到着していて、悠理は支払いまで済ませていた。


「もう。何考え事してんのさ。着いたから降りようよ」
「ええ。すみません」


厭きれたように僕の顔を覗き込み、腕を掴んでタクシーを降りる。
そして彼女はそのまま僕の腕に自分の腕を絡めてレストランに向かう。
知らない人が見たら、僕達は仲の良いカップルに見えるだろう。
彼女の振る舞いは余りにも自然で、僕の目にはむしろリラックスしているように見えた。
西欧風のレストランの店内は小さいながらも感じが良く、壁にはドガやロートレックの絵画のコピーが飾られている。
客層は様々でありながら、普段から足を運んでいる雰囲気だ。
僕達が入っても、静かにそれを歓迎しているように思える。
五十代位のレストランのオーナーらしい女性が注文を取りに来る。
僕は魚料理に真鯛のポワレを、彼女は肉料理に赤ワインで煮た牛肉のシチューを選んだ。
他愛ない会話の中で見せる彼女の表情はこの二年間で見たものと違い、とても自然で日常的だった。
つまり、以前の彼女を取り戻しているように思えた。
哀しいはずの魅録との別れを感じさせない、そう思えるのは自分の勝手な都合なのだろうか。
料理は二人が充分に満足するものだった。
皿に残ったソースをパンで掬って食べる程上等だった。
悠理は物足りなさそうに辺りを見回したが、すぐにデザートのワゴンが来るとにっこりと微笑んだ。
僕はデザートを断ってエスプレッソを注文し、彼女はドライフルーツケーキとストロベリーアイスクリーム、カプチーノを選んだ。


「これからどうする?タクシーで帰る?」
「この辺りを散歩してみます?ちょっと寒いけど、近くに湖があるようですよ」
「白鳥が飛来してるかな?」
「うう~ん。この辺じゃあ、来ないでしょ」


彼女は残念そうに窓の方へ視線を動かした。

午後の湖畔はこの季節、厚手のジャケットでも耐え難かった。
けれど空気が澄んでいて、枯れたような木々に夕方前の陽射しが緩く射しかかって美しい風景だ。
僕達は遊歩道をゆっくりと散策する。
岸辺で立ち止まり、無言で湖を見つめる。
ボート乗り場は閑散としていて、当たり前だがボートは一艇もない。


「白鳥が飛来する湖に、今度行ってみたいな」
「行こう、冬休みに」
「約束だよ」
「約束」


僕達は体を向き合せ、視線を絡める。
彼女の微笑は自然で、穏やかだった。
腕を伸ばすと、彼女は僕の胸に体を委ねた。
まるで失った時間を取り戻すように彼女の華奢な体に腕を回し、しっかりと抱いた。
腕の中で、彼女は言う。


「あたし達は最初からこうなるべきだった」


もう一度向き合い、見詰め合う。


「けれど清四郎だけが分からなかった。何にも分かっていなかった。
魅録が裕也の代わりになるまで分からなかった」


僕はもう一度悠理をしっかり抱き、ふわふわした髪の毛に口付けをした。
それからゆっくりこめかみへ移動し、頬にも口付けた。
そこにはあの日曜日の日のような涙は流れていなかった。
互いの唇を重ねても、涙の味もしなかった。
そこにあるのは芳しい彼女自身の香り。とても愛しい香りだ。
僕は決心する。
この口付けの後に僕の本当の想いを伝えよう。
クリスマスまでに、何て言っていられない。
これ以上、誰も傷付けてはいけない。
どんな事があっても、悠理にあの時と同じ涙を流させてはならない。

誰かの身代わりは、もうあってはならない。








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