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charm anthology

こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。

2013/12/03

the eternal triangle lament 4

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管理画面とブログの表示に違いがあるんですね・・・
原因は、残念ながら分からないんです。
もしコメント等送られて返事がない場合、管理画面に届いていないからかも知れません。
誠に申し訳ございませんが、どうぞご了承下さいませ。


さて、本日も続きをアップです。
あとちょっとで終わる予定ですが。。












翌日から僕は倶楽部に顔を出した。
メンバー達は何事もなかったように迎え入れてくれた。
そして“今まで通り”の関係がまた始まった。
六人での行動も三人での時間の共有も変わりなく行われた。
何かに集中していないと心の重圧に負けてしまうような不安も、
倶楽部の解散を思案する事もなくなった。
あの日曜日の昼前に僕の部屋で悠理と唇を重ねた事によって、
彼女への想いを自身の中で上手く収める事ができたようだった。
心の中に・・・彼女への想いを大切に仕舞える場所を設ける事ができたのだ。
魅録と悠理の出来事は、既に過去に決断されたのだ。もう思い悩む事はない。
例え試験勉強として僕の部屋で二人きりになろうと、何かのトラブルでペアを組んでも、
それは当たり前の風景として捉える事ができた。
全て、今まで通り。
そして魅録と悠理も同じように見えた。過去から現在に至るまで。
だからメンバー達は不思議に思っていた。
もっと二人の時間があっても、もっと二人だけの特別さがあっても。
けれど今までと変わらない時間を、彼等は僕達と過ごしていた。
しかし僕には、僕の目には時々、二人が親密な関係に見えた。
作ろうと思えば作れるはずの時間だ。そうなってもおかしくはない。
あるいは、僕の中にまだ完全に消化できていない異物として、不自然な影として、
そう見えていたのかも知れない。
その後に起こったトラブルによって留年を余儀なくされ、高等部三年をもう一年過ごさなくてはならなくなった時も、
別段辛くはなかった。
むしろ、メンバーと過ごす時間に喜びさえ感じた。

そうしてあの事も心の内に、僕の想いと共に仕舞おうとした時、小さな異物が零れ落ちた。

放課後に生徒会室に寄った時だ。
いつもならメンバーで賑わっている時間なのに、その場所にいたのは魅録だけだった。
彼はソファに深く座り込み、音楽関係の雑誌を見ていた。
じっくりと読んでいる感じではなく、たまたまそこにあったから時間潰しに目を通していると言う感じだった。


「あれ、みんなは?」
「美童はデートで、女性陣は三人で買い物だって」
「ふうん。魅録は予定がないんですか?」
「ああ。ちょっとここによって、それから帰ろうと思っていた」


今思えば、多分違っていたのだろう。
魅録はたまたま得た機会で、僕に話をしたくて待っていたのだ。


「コーヒーでも飲みます?」
「いや、これ飲んでるから」


そう言ってペットボトルの炭酸水を手にする。
自分の為にコーヒーを作るのも面倒に思い、僕も冷蔵庫から冷たい缶コーヒーを出した。
多分、野梨子か可憐が買い置きしてくれていたのだろう。


「どうです、悠理とは?」
「どうって、見たままさ。親友でもあり、恋人でもある」
「僕達とばかり遊んでいて、二人の時間を過ごしていないように思えますが」
「ああ、そうだけど。俺達はこれで良いと思ってる。こうしているのが自然で、楽しい。
時が自然に俺達の関係を深めるさ」
「そうですね。いかにも、魅録達らしい」


僕はソファで缶コーヒーを口にせずに弄ぶ。
自分で話題にしながら、そこから避けたい気持ちになる。
けれど、魅録がそうさせなかった。


「早いな。俺達が知り合ってもう四年経つ。
最初に悠理と知り合った。俺は別の中学にいて、悠理がこの学園にいて。
あいつ高校生相手に喧嘩してたんだ。この学園じゃあ珍しい、中等部のワルを庇ってさ。
そこに俺が通りかかって、参戦したってわけ。すっかり意気投合だった。
そうして野梨子と出逢って、清四郎達を知った」


珍しく感慨深げな彼に、僕は質問する。


「野梨子?」
「ああ。たまたま偶然、交差点で出逢った。何か思い悩んでいるようで、赤信号を渡ろうとした。
腕を掴んで止めようとした俺を“いやらしい”ってさ。
けれど後日、可憐に誘われた彼女とあのディスコで再会した」
「そんな事が?聞いてなかったな」
「あそこでみんなと出逢えて、本当に良かったよ。片想いだった悠理とも、こうして恋人になれた」
「ええ。良かったですね」

「でも、悠理が昔っから惚れてたのは、清四郎だったと思う」


胸を何かで衝かれたような痛みが走る。


「最初、悠理と出逢った頃は、多分そうだったと思う」



彼は言い直す。
そうしてペットボトルの炭酸水を飲んだ。炭酸の強さに、彼は顔を顰めた。


「まさか」
「まさかじゃないよ。お前は恋愛に関しては本当に鈍感だ。
勉強も武道もできるマルチ人間だけど、そうさ。
けれど俺は悠理が好きだった。それは悠理がお前を好きな気持ちよりも強く確かだった。
だから俺は、悠理の気持ちを奪った。悠理以上の女はいない。あんなヤツだけどね」
「彼女は愛らしい」
「ああ。今までもこれからも、本気に愛せるのは俺には悠理しかいない」


魅録は真っ直ぐ僕を見て言う。
逸らす事ができないその強い眼差しを受けるしかなかった。


「悠理にも魅録が必要だと思います。僕では、足りな過ぎる。
彼女を受け入れる心の広さも温かさも。僕は満足に彼女に愛を与えられない」


僕の脳裏に、あの日曜日の記憶が甦った。
悠理の体の熱さや甘い吐息、涙の味がする口付け・・・
あの時、確かに悠理は僕の腕の中に存在したのだ。
肉体だけではなく、彼女の心も。あの時だけは、僕のものだった。


「そう、今のままの清四郎じゃあ、悠理を満足にさせられない。
それはお前が何一つ分かっていないからだ。救いがたいがそれでも構わない。
何故なら、お前は有閑倶楽部のリーダーで、なくてはならない存在だからだ」
「でもそれはそれとして、大事な事は何も分かっていない」
「その通り。お前は大事な事は何も分かっていない。本当に何一つ」
「だから悠理は、僕から心が離れて行った」


僕の最後の言葉に、魅録は哀しそうな微笑を浮かべる。
それは何処か諦めにも似ていた。


「お前、本当に何も分かっていないんだな」


魅録はまた繰り返し、僕に言った。









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