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異性とのやりとりについて(特に恋愛関係において)は正しい答えは出せないけれど、忠実ではないと思う。
相手を思いやるより自分優先的な部分があると、メンバーの男友達に指摘された事が多々あるから。
だから、彼女との掲示板でのやりとりも忠実ではなかったのかも知れない。
最初の内は懐かしさと彼女の心情を汲んで、彼女の書き込みにはなるべく返信するようにしていた。
“淋しい夜には、どう過ごす?
今夜は何をやってもダメみたいだ”
当たり前の関係が急に途絶えさせられたのだから、感情のコントロールができなくなったのだろう。
“淋しい夜は・・・酒を飲む(笑)。
ごまかしが利かない時もあるよね。
好きな事に集中できないなら、君の気持ちをここに書き込むといい。
独りじゃないんだ。”
依存・・・あるいはそうかも知れない。
彼女自身が、既に覚っていた。
“アイツがいないと、自分が自分じゃないような気がする。”
彼女は彼によって、自分の存在を認識していたとしたら。
そこまで依存していたのだとしたら。
彼女の想いは、恋愛に酷似した全く別のものなのだろう。
“いろんなコト、どーでもいーっ!!
上辺だけ誰かに優しくなんて、自分がイヤになっちゃう。”
自身の優しさが、偽りだと彼女は言う。
“そうだね。人に優しくできればいいよね。
人は自分の鏡だから、そうする事できっと自分にも優しくしてくれる。
もっと自分を大切にして。
自分を大切にしなきゃ、人も大切にできない。
君は君自身を、もっと愛してあげて下さい。
僕も自己嫌悪に似た思いに、苛まれる時ありますよ。
聖人君子にはなれないから。”
僕は精一杯の言葉を彼女に与えた。
自己重要感を高めさせる為に。
本来の・・・彼女に戻るように・・・
少しずつ、少しずつ、彼女の書き込む内容に変化が見られたのは数ヶ月も後の事。
“入道雲を見つけたよ!
空がこんなにもキラキラに青いなんて知らなかった。”
僕に話しかけながら、返事を必要としないように思えた。
“本当の幸せ。本当の優しさ。与えることから、はじまる。。”
きっと、もう、大丈夫。
僕は思う。
僕は書き込む事から離れて読み手にまわり、何時しか・・・その場所からも離れて行った・・・
シャワーを浴びて部屋に戻ると、先程よりも室内温度が上がっている。
エアコンのスウィッチを入れる為にリモコンを手に取り、窓辺に向かう。
傾き始めた午後の陽射しの中、蜩が一匹一匹競うように高々と鳴いていた。
“ねぇ、もうここで会話がなくなってズイブンたっちゃったけど、毎日更新してるよ!
気付いたら、ほめて♪(笑)”
僕はあの日の夜のように、この場所に偶然訪れる。
“人生の転機について、語る(笑)。
一生のうちで、どのくらいあると思う?
何度も訪れる、当たり前のことだと思う?
そうだとしたら・・・あたしにもあるよ。
片手で間に合うかな・・・(笑)
人との出逢いもそうだよね。
メンバーとの出逢いもそうだって思ってる。
とても良い出逢いだって信じてるよ。
きっかけを与えてくれて、ありがとね♪”
やがて蜩は競うのを止め、互いを認め合うように鳴き始める。
似ているようで、全く違う鳴き声。
夏の夕暮れ時に鳴く、物悲しい印象ではない。
その声は大きく、力強いものだった。
あれからずっと彼女はここで、僕に向かって話しかけていたのだ。
もう僕の支えは要らない、大丈夫と勝手に信じてこの場所を離れた僕に向かって。
“暑いって言ったら罰金だよ。
一回いくらにしようかな?(笑)”
昨夜の彼女の書き込み。
“何回言ったか知らないけれど、もう五百円分くらい言ったような気がするよ。”
僕は明け方、彼女の投稿の上に書き込んだ。
そして今、立ち上げ直したモニタの前に座る。
“驚いた・・・ごぶさた!(笑)”
時刻は、ちょうど十分前。
“久しぶりだね。
暑いって言わせないように、君を避暑地に誘おうかな?
今週末辺り、どう?”
“そこに、いるの?”
モニタの向こうで、悠理が泣き笑いしているような気がする。
“ああ。”
すまなかったね。
独りで、つまらなかったろうに。
“いいよ!
暑いって言った分、おごりで~♪(笑)”
“五百円じゃあ、お昼代にもならないよ。まあ、いいか。
土曜の朝、迎えに行くから。
それまでに、君が計画を立てているんだよ。”
“りょーかい!
ありがと。。楽しみにしているよ。”
“ああ、また。”
“またね。”
彼女の心の中に残っていた彼への恋は、形を変えて歩き始めていた。
それは僕の心の中に芽生えた想いに似ているのかも知れない。
蜩がまた、一斉に鳴き始める。
先程よりも大きく、力強く。
まるで、暑い夏はまだまだ続くと言っているかのように。