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charm anthology

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2016/04/08

outsider 8-2

ご訪問ありがとうございます。

最近、小説投稿サイトにて過去作をアップしているのですが、“outsider 8~時に、優しい傍観者~”をアップして・・・何だかちょっと魅録編を描きたくなってしまって、ささっと続きを考えてみました。
久しぶりのトライアングル~♪とまでは行かなくても、ちょっとそんな風味です。

今回はこちらにてアップです!!







公園の小高い丘まで一気にバイクで走り抜く。
丘の上に到着してエンジンを切ると同時に体感温度がぐっと上がり、背中に汗が流れたのが分かる。
ヘルメットを外すと心地よい風が通り過ぎ、ふわっと花の香りがした。
どこか懐かしくて、小さい頃からよく知っている・・・でも、名前は知らない。
野梨子なら絶対知っている。
清四郎なら、余計な説明まで付けてくる。
美童や可憐なら、自分達に見立てて話してくる。
じゃあ・・・アイツは?
きっと、知らないって言って、そっぽを向いてどこかに行っちゃうんだろう。
で?俺は?と自分に問うけど。さて。
去年の夏までの俺なら、絶対追うさ。

そんなん気にすんな。俺だって分かんない。
花の名前なんて知らなくたって生きていけるし、飯はうまいぞ、悠理。

ははは・・・
名前を知らない花の香りに誘われて、自分らしくない妄想にかられていた。
近くの裸ん坊の枝が風に揺れて、重なった部分がカサカサ音を立てる。
見上げれば柔らかな空色が一面に広がって、雲ひとつない。
じっとしていても背中が汗ばむほどの陽気で、完全な春を湛えている。
日曜日の午後の木漏れ日を通す枝も、よく見れば新しい命が芽吹いている。
こんなとっておきの日は、誰かと共有したくなる。
でも、俺は誰も誘えず、こうして独り過ごしている。
ただ“誰でも”ではダメで、“誰かの代わり”はもっとダメで。
結局、“唯の一人”になる。
手放した獲物は大き過ぎた、俺には。
けど、手を放しちゃったのも俺で。

バカだね。
アイツに言わせりゃあ、「アホか!魅録」かな。

日曜日の午後の公園は家族連れで賑わっているけど、この小高い丘は俺だけの場所になっている。
なんて、去年の夏までは、二人だけの場所だった。
当たり前の場所、当たり前の時間・・・
でも、手放したのは、自分。
そうだよな、悠理。

出逢った中学時代からずっと大切な存在だった。
友達と言っても、それ以上の想いはあった。
スゴくスゴく気になって、俺の中で高ぶった気持ちは抑えられなくなって・・・
もっと良く知りたくなった。
もっと、悠理に触れたくなった。
悠理は俺に応えようとしたけど、必死になってそうなろうとしたけど、アイツには負担だったんだよな。

俺の“好き”は、肉体的欲望。
アイツの“好き”は、精神的安定。

だからその安定を、俺が壊すワケにはいかなくなった。
だって俺は、アイツが本当に大切だからさ。
苦しんで壊れるくらいなら、いっそのこと、また友達に戻ればいいんだって思った。
けっして離れるワケでもないし、失うワケでもない。
それにこれまでのような友達関係に戻ったら、今の、恋人としてのギクシャクした関係よりもずっといいって思えた。
お互いに躊躇したり遠慮したりするよか、“友達に戻れば、いろんなコト、また話せるようになる”って信じられた。
だから最後のデートの日、また友達に戻る握手の手を悠理へ差し出した。
彼女はびっくりしたような、悲しいような顔して、それからおずおずと手を伸ばして、差し出した俺の手に重ねた。
とても冷たくて力ない、小さな手だった。
友達に戻る握手だけど・・・けれども、その距離は一向に縮まることはなく、以前のような友達に戻る気配さえもなかった。
多分俺の意識が友達への距離を遠ざけ、自身の存在さえも遠退き、余計に関係は悪化した。

全てを知る清四郎が悠理の側にいるけど、近況としては、

「友達としての魅録と、恋人としての魅録の両方を失ったような感じで、ずいぶん落ち込んでいますよ」

ってコトらしい。

「悠理を本当に想うなら、彼女を手放すんじゃなくて、ありのままを受け止めて待ってあげるべきだったと思います」

まだ幼い考えしかできない悠理に恋人になれって言ったってムリなんだから、今のままの悠理を見守りながら、少しずつ大人になるまで待っていれば・・・と言うことだった。
出逢った頃はもちろん、ただ一緒に遊べるだけで充分だったさ。
けど、男の俺の成長は悠理のとは違って順調で当たり前だったから。
もっともっと悠理を知りたかったし、触れたいって思った。
でも悠理には負担でしかなかったんだ。

避けてるつもりはないけれど、まだ俺だって落ち込んでる。
せめて以前のような友達に戻りたいけど、友達以上の関係を一度でも持ってしまったら、元には簡単に戻れないって知った。
軽率だった。俺が、軽率だったんだ。
付き合うにしても、手放すにしても。

「なぁ清四郎、俺、どうしたらいいんだろ?」
「こうなってしまった以上は、自然に任せるしかないと思います。
お互い、嫌いになって別れた訳でも、他に好きな人ができた訳でもないのだから、ちょっと距離を置いて、また少しずつ歩み寄って行けばいいんじゃないんですか」
「どれくらい時間がかかるんだろう?」
「さぁ。まずは傷付いてしまった悠理の心を癒してあげて、それからかな」
「うん」
「しばらくは僕が悠理を預かっておきます」
「頼む」
「ええ・・・でも、もう、返したくないって感じですが」
「!!」

驚愕する俺を、清四郎は楽しそうに笑う。

「冗談ですよ。でもね、僕だって悠理を大切に想う気持ちは魅録には負けないですよ」
「なっ!せい・・・」
「まぁ、幼馴染みとしての時間は別としても、友達としてのスタート地点は一緒だった訳だし」

それにね、今となってみては、僕と魅録のどちらを選ぶかは彼女にかかっているし、そう言った意味でのスタート地点も一緒な訳でね。

意外な展開に、俺の脳みそは追い付くのが精一杯で。

「悠理を預ける相手についてまで、俺は軽率だった」
「まぁまぁ、落ち着いて。最初、魅録達が付き合うと聞いた時は、僕だってずいぶん落ち込んだんですから」
「じゃあ今は、良かったって思ってんだろ?」
「とんでもない!僕は悠理が笑っているのが一番嬉しいんですよ」
「ふん!清四郎、俺は負けないぞ。悠理が好きなのは俺だ」
「僕だって負けませんよ。移り変わるのは時間だけではないって思いますしね」

まずは悠理の笑顔が戻るのが最初で、それからですよとヤツは言う。

「悠理の成長はゆっくりですから」
「今度は待つさ。友達としてじゃなくて」
「僕だって友達としての距離を縮めるつもりです。大人への成長に寄り添いながらね」


選ぶのは悠理。
でもそれまでは・・・今の俺ができるのはただ待つだけなのだろうかと考える。
清四郎と競い合うんじゃなくて、なんだ!?



態勢を整える。
記憶を呼び起こして熱くなる体は、丘の上を通り過ぎるそよ風すら寄せ付けない。
俺はバイクに乗り、心の中に真新しいスタート地点となる白線を引いた。




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