ご訪問ありがとうございます!
拍手・ランキングへのクリックも嬉しいです♪
コメントもいただいておりました!
ありがとうございます!
とても励みになりました。
もう少しお時間をいただきましたら、返信の再開を致したいと思います。
本当にありがとうございます♪
本日はこちらのブログに“ボツネタ”アップです。
そう言えば初等部の五学年か六学年の頃、確か一度だけ家に来たことがあったね。
クラスでの班が一緒になって、模造紙に何か調べて書かなくてはいけなくて。
多分、研究発表会か何かの発表だったんだと思う。
どうして君だけが僕の家に来たのか、理由は覚えていない。
きっとみんな、習い事とかあったんだと思う。
あるいは・・・君は怒るかも知れないけれど、君と一緒の放課後の活動を避けていたのかも知れないね。
男子と喧嘩ばかりで、普段からクールで素っ気なくて、他の友達と馴染んでる風には見えなかったから。
今と変わらない僕の二階の部屋に入ったとたん、君は僕のベッドに座った。
そして、ふうんって感じでスプリングの様子を窺っていた。
僕は早速フローリングに新聞紙を広げ、その上に真っ白な模造紙も広げた。
「僕が鉛筆で下書きするから、悠理ちゃんが油性ペンでなぞるんだよ」
確かそんな会話があって・・・でも、結局僕が全部書いたんだよ。
下書きの鉛筆は姉貴が消ゴムで綺麗に消してくれて。
終わった後に母親がおやつを持ってきてくれながら、子供会やボーイスカウトのパーティで余った文房具や小さなおもちゃがたくさん入ったビニール袋も持ってきて好きなだけ持っていっていいよと言った。
「わぁ~、本当にもらっていいの?」
両手をぱちぱち叩いて、本当に嬉しそうに笑っている。
普段の冷たいイメージと違って、無邪気な思ったより子供っぽい彼女に、正直ドキッとした。
そして、素直にかわいいって思った。
「たくさん余ってるんだって。喜んで、大丈夫」
「高学年の卒業パーティとかお引っ越しのお別れ会とかさ、こういうのイッパイ出るよね」
「うん」
「あたしもこういうの、イッパイ用意してみんなにあげるんだ」
「え?引っ越すの?」
僕は彼女の話にびっくりした。
だって、ずっと昔からあるあの大きくて派手なお屋敷がなくなっちゃうのかと思ったから。
「ううん。もし、そうなった時にさー」
「・・・じゃあ、まだいいんじゃない?その時で」
「うーん。まーねー」
それからしばらくの間、彼女はビニール袋に手を入れたまま中の物をグシャグシャにして触っていた。
「あっ!」
「なに?」
「壊しちゃった」
見れば安っぽい鉛筆削りの蓋の部分が欠けて外れてしまっていた。
「いいよ。わざとじゃないし」
「でも・・・」
彼女はビニール袋をひっくり返して中身を全部出した。
壊れているのはそれだけではなく、他の物、例えばプラスチックの鉛筆キャップがひび割れたり、小さなおもちゃの車のタイヤも外れたりしていた。
「あたし、壊したの全部もらってあげる」
「悠理ちゃんが壊したのか分かんないし、わざとじゃないからいいって」
それでも気にしているようで、ずっと壊れたそれらをいじっている。
「じゃあ一個だけ直してあげる。それを持っていけば?後はこっちで捨てるから」
「うん」
「どれ直したい?この鉛筆削り?それともキャップ?」
彼女はしばらく悩んで鉛筆削りを選んだ。
僕はそれと欠けた部分の小さな破片と、蓋を持って机に向かう。
引き出しには瞬間接着剤が入っているはず。
不安そうに僕の隣に立ち、顔を覗かせている。
無意識なのは分かるけれど、僕の頬にぴったりとくっつきそうでドキドキした。
ドキドキはまるで大きな音を立てて彼女の耳に届きそうだし、落ち着こうと焦る気持ちが僕の頬を熱くした。
気づかれないように顔を離し、欠けた部分を熱心に見るようにする。
すると気遣うように、彼女は机のスタンドの電気を点けた。
顔が赤いのがバレる!
そう思うと余計に頬が熱くなる。
「ス、スタンドの電気消していいよ。自分の机だから慣れてる」
「そう?」
でもそのままで、ちょっぴり不審そうに僕から離れ、ベッドに座っておやつを食べ始める。
何よりも集中するように食べているので、僕はホッとしてこちらも集中して破片に接着剤をつけた。
「ほら、悠理ちゃん。瞬間接着剤で直った。」
何度か接着部分に息を吹きかけてから彼女に手を伸ばすと、彼女は大事そうに両手の平で受け取った。
結局その他にもいくつか文房具とおもちゃを選ぶと、嬉しそうに、本当に嬉しそうに布の手提げバッグに入れて何度も中を覗いていた。
それから僕の母親が、もう少ししたらお夕飯だから一緒に食べて行ったら、と言うと、
「五時までにお家に帰るのが学校の決まりだから帰る」
と、意外にも真面目な答えが返ってきた。
そのあと時間まで僕達は一体どんな風に過ごしたか、余り覚えていない。
ただ、壊れた文房具やおもちゃが入っているビニール袋がまだ気になっているようで、そちらにも顔を覗かせていたのは覚えている。
「自分でも直してみる?」
僕の問いかけに、黙って首を左右に振ったことも。
今になってどうしてそんな何年も前のことを思い出したかと言うと、先日悠理の部屋にメンバーで遊びに行った時、ふと机の横の本棚に目がいった。
雑誌や漫画本やゲームセンターの景品がぐちゃぐちゃに飾ってあるその一番上の棚に、僕が直してあげた例の“鉛筆削り”がひっそりと置かれていたのだ。
気づかれないように手を伸ばして取ると、普段からしっかり手入れがされているように埃はどこにも着いていなかった。
接着部分もまるでさっき直したばかりのようにぴったりとくっついている。
僕はあの時感じたのと同じような気持ちになる。
幼い悠理がおもちゃや文房具を見て素直に喜んだ時に、僕も感じた喜び。
壊れた鉛筆削りを接着剤で直して手渡した時に、大事そうに両手で受け止めてくれた嬉しさ。
それらは純粋に覚えたものだった。
けれど今は彼女に伝えない。
この気持ちは今度。
今度僕と悠理が二人っきりになれた時に伝えようと思う。
その時は、きっと僕の彼女への純粋な気持ちも伝わるって信じているから。