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2015/08/18

高等部三年、夏休み中の登校日

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お盆も過ぎ、今日はちょっと過ごしやすいです。

ぱぱっともう一つ、番外編です。






夏休みの半ば頃に、僕達の学園では登校日がある。
クラブ活動の大会やコンクールの結果報告をしたり、その日までに終えた課題の提出、質問事項等、ちょっとした活動が控えている。
僕達は生徒会役員としての朝の集会をまとめ終えるとそれぞれの教室で提出物を出し、下校時間まで生徒会室兼部室で過ごした。
僕はソファに座り、夕方からデートを約束している年上の彼女にメールを送る。
何度かそうやってやり取りをし、週末の相手について考えていた時・・・
窓辺に立つ悠理の仕草がやけに大人っぽく見えるのは何故だろう、と思った。
彼女は窓辺に立ち、可憐と話している。
多分可憐の新しい彼氏と過ごした夏休み前半について(聞きたくもないのに)聞かされているんだ。
けれど悠理は可憐の話を微笑みながら相槌を打ち、普段ならあちらこちらに元気良くはねているはずの髪を綺麗に手櫛で流している。
時々窓の外に視線を動かし、その目は遠くを見つめていた。
可憐のスマホに着信があると、彼女は慌てて給湯室に駆けて行く。
一人になった悠理は窓辺に寄りかかってまた外を眺めた。
彼女の横顔が見える。
大きな瞳は、まだ遠くを見つめている。長い睫毛は濡れているよう。
鼻も筋がすっと通っていて、高い。
ふっくらした唇は何も着けていなくてもピンク色で艶がある。
本当に綺麗な女の子だ、と思う。

綺麗な、女の子?

違う。女の子じゃなくて、綺麗な女性に見えちゃう。
悠理は、一学期までの悠理じゃないみたいだ。
自然に、胸元に目が行っちゃうし、腰の辺りがちょっと丸みを帯びたように思える。
以前のガリガリしたイメージがなくなって、そう、柔らかな体つきなんだよ。

どうして?なぜ?

僕は悠理に近付き、ちょっといいかなって言って隣の準備室に連れて行った。
陽が当たらないこの部屋は、ひんやりしていて埃くさい。

「なに、美童?」

先に部屋へ入った彼女が、中央辺りで振り向いた。
艶やかな笑みは、彼女を知らない男ならすっかり魅了されていると思う。

「ねぇ、夏休みの前半はどうだった?誰と過ごしたの?」
「ん・・・清四郎と。温泉行ったり、そんなトコかな」
「ふうん。魅録は、野梨子だもんね。僕知ってたんだ、悠理の気持ち。整理はついたの?」
「知ってるって何を?」
「悠理は、ずっと魅録を想ってた。でも、魅録は・・・」
「やめて」

彼女は僕の話を遮る。
目を伏せ、長い睫毛は震えている。

「話はそれだけ?だったら戻る」

僕と目を合わせないようにして横を通り過ぎようとする腕をつかむ。
一瞬、手が彼女の胸に当たると、そこにはリアルな感触があった。
僕は顔を近付け、彼女と目を無理に合わせる。泣いてはいなかった。

「ごめん、ごめん。怒ったの?」
「別に・・・」
「でも今は大丈夫なんだね。清四郎とうまくいってるんだね」

「美童」

悠理は背を伸ばして立ち竦んだ。
僕の手は自然に離れ、体も離れた。

「魅録はどうとか、清四郎とはどうとか、やめてくんない?あたし別に、二人を両天秤にしたいとか思ってないし」
「うん、分かってるさ。ごめん、興味本位だった。悠理が・・・」
「あたし?なに」

僕はまた、悪戯に彼女に近付く。僕って懲りないよなって思う。

「ちょっとの間でぐっと魅力的になったからさ」
「冗談」
「本当さ。世界中の女性を恋人にするくらいの僕が言うんだ」

彼女は両手で口を押さえて笑った。
そんな彼女の手首を、僕は不意につかむ。
彼女はびっくりしたように目を見開き、僕を見つめる。
でも、普段の警戒したような目付きではない。
口許から離れる彼女の手の代わりに、僕の指先がその尖った小さな顎に触れた。
自分でも分からないけれど、彼女は大切な僕の仲間で親友だけど、そうせずにはいられなかった。

「ダメだよ」

僕が顔を近付けた時、彼女はそう言った。
一瞬動きが止まり、優しく指先を離す。

「だよね~」

いつもの、僕達の空気が流れる。

「あんまり悠理が綺麗だからさ」
「あっは!さっきからウソばっかり言うな。何かあたしにおねだりだろ」

彼女の言葉の意味を探す。
多分この事はなかった事にしたいんだろう。

「実はそう。今週末に行われる剣菱主催のパーティに僕も招待して欲しいな。素敵な出逢いが僕を待っていそうだし」
「りょーかい、りょーかい。後で詳しいコト連絡するからさ」

グッドタイミングでノックがなる。

「美童?悠理、ここなの?」

可憐が僕達を心配して捜してたんだ。

「何してるの?こんな所で」
「ちょっと悠理にお願いごと」
「な~に?ずるい、教えてよ!」

部屋の中に入って来た可憐の腕をさっと取って廊下に出る。
その方が、悠理への詰問が避けられそうに思えたから。

「ほら、週末のパーティだよ。悠理にお願いしてたんだ」
「あ、それね!わたしも行きたいわ」
「でしょ。そう思って悠理から了解もらったよ」
「ほんと?嬉しい!」

僕は後ろを振り返る。
微笑んでいる悠理と目が合って、ウィンクする。

“この事は、二人の秘密だよ。なかった事にしないで”

いつか悠理の心の整理がついたら聴かせてよ。
キミを綺麗にしたのは失恋を与えた魅録なのか、それともずっとキミに想いを寄せていた清四郎なのか。

けれど悠理は、僕の心の内が分かったように小さく舌を出した。

拍手[25回]

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コメント

1. きゃーん!

美童ですらクラリとくる色気!
悠理をきれいにしたのは清四郎にちがいない!笑

もちろん失恋は女を美しくするけど、男を
惑わさせるくらい綺麗になるのはやはり新しい恋ですよねーー!

美童ってば!まったく!

うつき様

いつもコメントをありがとうございます!

今回は久しぶりに美童くんに登場してもらいました。
彼なら!すぐに女の子の変化を察知できると思いまして♪

悠理を綺麗にしたのは、もちろん清四郎ですよね!
女性を意識してしまいますね、綺麗になると、もっと♪

今回も楽しくこのシリーズを描きました!
ありがとうございます。

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