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こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。

2015/01/07

高等部二年、冬休み

あけましておめでとうございます♪
今年もよろしくお願い致します。

お正月は楽しく過ごされましたか?
私はずっと家族と共に過ごしました。
あっという間のお正月休みでした。。

今日は荒れ模様のお天気ですね・・・
どうぞ風邪などひかないよう、お気を付け下さい。


久しぶりに『学園物語』シリーズをこちらのブログにアップ♪

誤字脱字等がございましたらお許し下さいませ。。










正月早々、僕は風邪をひいてしまった。
大晦日の夜辺りから体調不良を感じ、少し休むつもりで入ったベッドから起き上がることができず、とうとう年が明けるまで眠ってしまっていた。
メンバーと初詣の約束をしていたが、もちろん行くことはできなかった。
熱と体の痛みで意識は朦朧としていたが、姉が病院から届けてくれた薬を飲んでまたぐっすりと眠ることで大分楽になった。
部屋のドアがノックされた時カーテンを締め切っていた為か、時計を確認したにも関わらず昼と夜を取り違えたようだった。


「清四郎、眠っていて?」


幼馴染みの野梨子が静かに部屋の中へと入って来た。


「いや・・・ちょうど目を覚ましたところです」
「気分はいかが?」
「大分楽になりました。夜遅く、悪いね」
「夜遅く?嫌ですわ、もうお昼近くですのよ」


彼女は声を上げて笑うと、窓辺に近付いてカーテンを開けた。
今日は正月二日の昼近くだと言う。


「部屋が熱っぽい臭いがしますわ。少しだけ窓も開けますわね」


二重になった強化ガラスを細く開けると、冷たい風が入る。
ほんの少し、と彼女は言って部屋の空気を入れ換えてくれた。


「ありがとう。メンバーと初詣に行きましたか?」
「ええ。意外な清四郎に、皆は残念がっていました」
「意外?僕だって風邪くらいひきますよ」
「普段は予防をきちんとしてますでしょ。気を抜きましたの?」


野梨子は冗談っぽく言った。


「インフルエンザの予防接種は親父の病院でやったんですけどね。
まさか元旦に風邪をひくとは思いませんでした」
「だから気を抜いたと言ったんですわ」
「野梨子は大丈夫です?」
「私は予防を兼ねていつも緑茶を飲んでいますもの」
「野梨子には敵いませんね」
「お食事は取れますの?下でおば様が昼食を作ってますわ」
「部屋で取ろうかな。野梨子も一緒にどうですか?」


一瞬、彼女の表情が曇る。けれどすぐに普段の笑みを見せた。


「約束がありますの。お食事を持って来てから御暇しますわ」


母親が用意した昼食をトレーで運ぶと、幼馴染みはまた見舞うと言って出て行った。
同日の午後、親友が部屋を訪ねた。
既に五時を回っていて、幼馴染みが開けたままのカーテンはそのまま、窓ガラスはフットライトでうっすらとした僕の部屋を映していた。


「よお。どうだ?」
「魅録、大分楽になりました。わざわざすみません」
「電気点けるぜ」


僕の返事を待たずに部屋の電気を点ける。
全灯に目眩がする。
目頭を押さえる僕に大丈夫かと訊きながら、机用の椅子に座った。


「ずっと横になっていたんでね。まだちょっとくらくらします」
「うん・・・これ、悠理からの見舞い」


僕の目の前に果物を盛り合わせたバスケットを掲げる。
色とりどりの果物に、思わず見入ってしまった。


「水分を取った方がいい。何か食う?」
「ええ、後で」
「うん。そうした方がいい」


それからちょっとした間が、僕と親友を居心地悪くさせる。
彼はどうか、少なくとも僕はそう感じた。


「悠理と、今日会ったんですね。見舞い・・・」
「ああ。ま、野梨子とちょっと約束をしていて、その途中で悠理と合流した。
初詣の後解散したきり、皆それぞれたから」
「そう。で、悠理は?」
「用事があるって。明日、美童達と来るんじゃないか」
「正月ですからね。皆忙しいですよ。無理しなくても良いと、後でメールしときます」


魅録は肩を竦めて笑った。
親友が帰った後程なく、悠理からメールが入った。


“野梨子も魅録も大丈夫そうって言ってたけど、どう?元気なった?
見舞いに行こうと思ってたけど、明日から家族でハワイに行く。悪い。
前々から行く予定だったけど、父ちゃんの仕事の調整がつかなくて、やっと。
今回はみんなを連れていけないよ、残念だけど”


僕はすぐに返信する。


“大分良くなったから心配いりませんよ。ハワイを楽しんでいらっしゃい。
帰国したら連絡を下さいね”


分かったとも、うんとも、返信はなかった。
そしてそれは、一週間経ってもなかった。
悠理が帰国したことは幼馴染みの野梨子を通して知った。
けれど、帰国した後の彼女に会ったメンバーは誰もいなかった。


「私も魅録から、悠理の帰国を知りましたのよ」


今朝、新聞を取りに門先まで出た時に、同じ様に出て来た幼馴染みがそう言った。


「もうすっかり風邪は良くなりまして?」
「ええ、お陰様で。すっかり治りました」


良かったですわと僕に背を向けようとした友人にまた声をかける。


「何だか、皆バラバラの冬休みになりました」
「ええ。休みも残りわずか」


そう、僕は元旦から一週間以上家に籠りっきりでいたのだ。


「野梨子は充実した冬休みを過ごしましたか?」


小さな彼女は、何か大きな秘め事を持つ瞳で僕を見上げる。


「ええ。私、ずっと魅録と一緒に過ごしていましたの」


僕は茫然として幼友達を見つめる。
彼女はごきげんようと言って、今度こそ背を向けた。

視線を上げると冬の空が見える。
枯れたような木の枝々から、淋しい朝の陽も射し込んでいる。
僕はいても立ってもいられなくなって、その足で悠理に会いに出かけた。
しかし剣菱邸には彼女はいなかった。
彼女は昨夜バンド友達のライブに出かけ、会場近くのホテルに泊まっていると言う。
僕はそのまま歩いてそのホテルに向かった。
オフィス街の片隅にそれはあり、通りは会社に向かう人々で溢れている。
短い正月休みを終え、皆現実に歯向かうことなくまっすぐ歩いている。
僕はホテルの前の小さな広場の噴水の前で、じっと彼女を待ちながら佇んでいた。
ホテル利用客がエントランスから出て来て僕の前を通り過ぎた。
そうした状況を何度かやり過ごし、やっと悠理がホテルのエントランスから出て来た。
僕は噴水の前から彼女に向かって片手を上げ、すぐに気が付いた彼女が走り寄った。
彼女はほんのり日焼けしていた。


「ずっと?」
「いや、少しだけ待ちました」
「ロビーで待っていれば良かったのに。寒かっただろ」
「歩いて来たからそうでもない」
「風邪、治った?」
「ええ、すっかり。ありがとう」
「ぶり返さないように」


僕はもう一度ありがとうと彼女に向かって言った。


「なんか急ぎの用だったの?」
「暮れから悠理に会っていなかったし、ハワイに行くとメールを貰ったきりだった」


彼女は不思議そうな眼差しで僕を見上げる。
その瞳は、今まで一度も見たことはない。
彼女は口の中で小さく何かを呟き、おもむろに大きなショルダーバッグからくしゃくしゃの白い紙袋を取り出して僕に差し出した。


「僕に?」
「ハワイのお土産」


袋を開けるとシルバーのバングルが入っている。
手に取ってよく見ると、力強い波の模様が彫ってあり、太くて重い。
イメージするのは僕の腕ではない、他の誰かだった。


「ハワイアンジュエリー」
「ハワイアンジュエリー」


遠い、南国の匂いがする。
けれど目の前は、本格的な冬の気配。
空は、グレイに染まっている。
ずっと前、授業を休んで秋晴れの空に浮いた雲を一緒に見た。
秋、沈みそうな夕陽。宵宮から離れた静かな公園。
重ねた唇・・・


私、ずっと魅録と一緒に過ごしていましたの。


幼馴染みの声が脳裏に浮かぶ。
沈まない太陽を見るのは一体誰なのだろう。
僕は悠理を自宅まで送った。

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