忍者ブログ

charm anthology

こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。

2013/11/22

the eternal triangle lament 2

ご訪問ありがとうございます。
作品への拍手も届いております。
ありがとうございます。

さて、連載の続きをアップです。
う~ん、いつも通りのまったり更新では、厭きてしまいますね、きっと。
できる限り、頑張って執筆したいと思ってます!

あと・・・
「彼女の恋を知った時」の続きもただいま検討中です。
今回の作品と似たような展開になってしまいそうで・・・(内容は短いですが)
もう少し時間をいただいて、続きを書く事ができればお知らせしたいと思います。
続きを楽しみにしていた方々、本当に申し訳ございません。
どうぞお時間を下さいませ。













倶楽部のバランスは、とてもよく保たれていた。
僕と野梨子が計画を練り、魅録と悠理が行動し、美童と可憐がそこに華を添える。
また、たまにパートナーが換わったとしても、そのアンバランスさが例えばトラブルに巻き込まれた時に解決の糸口に繋がりもする。
つまりどのようなコンビネイションでも息が合った。
その中でも取り分け、僕と魅録と悠理は意気投合した。
それは遊びであり、トラブルであっても、三人の動きは声に出さずとも気持ちが一つになれた。
考え方に違いこそあれ(特に悠理は)、互いを受け入れる事は容易だ。
普段は六人で行動する事が多いが、ちょっとした時間を三人で共有する事も多かった。
魅録と悠理は、僕と野梨子がそう見えるように、仲が良かった。
いや、僕と野梨子は幼馴染であるが為に、仲が良いと言うよりは兄妹のような感じだった。
傍目には違って見えたかも知れない。けれど当事者同士としては、そうであった。
魅録と悠理は、またちょっと違っていた。兄妹と言う感じには誰にも見えていない、もちろん。
喧嘩友達、悪友、親友・・・あるいは恋人・・・
他人の目にはどのように映っていたのだろう。
傍若無人な彼女を、温かく見守って受け入れる特別な異性。
僕には魅録がそのように見えた。少なくとも。
悠理にとって特別な異性が魅録であるように、僕にとっても彼女は特別な異性だった。
喧嘩っ早いけれど仲間思いで、泣き虫な悠理。
幾つになっても腕白盛りで手に負えないけれど、本当は誰よりも脆い。
淋しがり屋で誰かが傍にいないと・・・それは魅録であり、僕であるはずだった。
そして僕は、そんな彼女に惹かれていた。
あるいはいつも自然体でいられる彼女に憧れを抱いていたのかも知れない。
できるなら彼女にとって特別な異性は、僕であって欲しいと願っていた。
けれどそれは願うだけで、実際的には何も行動に出さなかった。
出した所で彼女がどう思うのか不安だった。
想いを言葉にして、今の僕達の距離に変化ができるのが怖かった。
それに・・・そうなったとして、倶楽部のバランスが崩れるのは明らかだ。
六人がギクシャクしてしまうのは嫌だったし、何より、そのバランスが保たれないでは、
悠理が一番悲しむだろう。


そう考えていたのは、僕だけだったのだろうか。
魅録は、きわめて簡単にそのバランスを崩した。
倶楽部の事も、三人の事も、悠理の事も考えての行動とは、僕にはどうしても思えなかった。


リビングルームのソファで、魅録はコーヒーを飲みながら僕を待っていた。
その時は既に、テレビもDVDもついていなかった。
まるで与えられたチャンスを逃さないように準備しているかのような雰囲気だった。
僕も向かい側のソファに座り、自分のマグカップに新しいコーヒーを注いで一口飲んだ。
ふっと軽く息を吐いた時、魅録は言った。


「俺、悠理と出逢った時からずっと好きだったんだ。
心に留めておくべきなのかも知れないけれど、それも限界に近い。
想いを告げようと思う。清四郎、構わないか?」


それは余りにも唐突で、すぐには言葉が出なかった。
彼は辛抱強く僕の返事を待っていた。
何と返事をすれば良いのか・・・けれど、悠理には僕ではなく魅録が相応しいのだとその時は思った。


「ええ。もちろん。悠理は、知ってるんですか?」
「いや、まだ何も言ってない。悠理の返事がOKなら、恋人として付き合おうと思う」
「そうですか」
「ああ。でも悠理の前に清四郎に話さないといけないって思ってたから。
その答えを聴いて安心したよ」
「悠理も嬉しいでしょう」


多分・・・


「そうだといいよ」


魅録は安堵のため息を吐いた後、本当に嬉しそうな笑顔を僕に向けた。


「ありがとう。けれど俺達の関係は今までと変わらないよ。
六人でも、三人でも。変わらない付き合いをしていくつもりさ」
「お気遣いなく」
「ああ。でも、そうしたいんだ。特に清四郎とは」


特に僕とは?
何故悠理の気持ちよりも僕の承諾を必要とするのだろう。
けれどそれに追求はしなかった。
僕の返事の後、魅録はその話題を避けるように別の話題を持ちかけたからだ。
それから一時間後、そろそろ魅録が帰ると言うので、僕は自室に悠理を起こしに二階に向かった。
階段を上りながら、僕は全く別の脚を左右交互に動かしているような錯覚に陥った。
部屋のドアを目の前に、軽い眩暈さえも覚えた。
気をしっかり持つように自分に言い聞かさせ、僕は自室のドアを叩いた。
彼女からの返事はなく、ゆっくりとドアを開ける。
部屋は先程のままで、ベッドは彼女の身体分、盛り上がっていた。
毛布に乱れがなく、近寄ると、彼女はまだ気持ち良さそうに眠っていた。
僕はもう一度椅子に座り、ほんの少しの間彼女の顔を見つめる。
よく見ると、頬に涙の後があった。
怖い夢でも見ていたのだろうか?
彼女の頬を指で擦り、その指を舌先に乗せる。
それは間違いなく涙だった。


「清四郎・・・」
「起きた?怖い夢でも見てたの?」
「夢・・・?」
「いや。魅録がそろそろ帰るそうです」
「もうちょっと寝てたい。先に帰るよう、伝えてよ」
「それはできません」


そう。それはできない。
だって魅録は、これから悠理に告白するのだから。


「なんで?」
「用事があるって言ってました。その用事には、悠理が必要なそうです」
「用事って何?」
「さあ・・・」


彼女は少し考えるように天井を見上げ、それから「分かったよ」と言ってベッドから起き上がった。
そして眠る前と同じようにさっとトレーナーを着込み、ジャージーに手をかけた。
僕は今度は何も言わずに背中を向け、彼女は遠慮せずにそれを脱いだ。
衣擦れの音は、僕に何も与えなかった。


「もういいよ」


彼女の声で僕は振り向く。
ベッドの上には無造作に置かれた僕のジャージー。
同時に、僕達はそれを見るともなく見ていた。


「清四郎」


僕の名を呼ぶ彼女に視線を動かす。
悠理は、僕をじっと見つめていた。
その瞳は何時になく真剣で、深い色を称えていた。
それはまるで、僕に何かを伝えようとしているように思えた。
けれどその何かを、僕は理解する事ができなかった。

もし今ここで、彼女の意思に従って引き止めたら、未来はどのように変わるのだろう?
魅録は、目が覚めない彼女を不審に思いながら今日のところは独りで帰ると言うのだろうか?
それとも、この部屋までやって来て、彼女を優しく起こすのかも知れない。
では、ここで僕が抜け駆けをして彼女に想いを告げたら?
彼女は僕を受け止めてくれるだろうか?それとも、魅録は・・・
僕の思考はそこでストップする。

僕はやはり、自分によってバランスが崩れる事を懼れている。

気が付くと、悠理は僕をもう見てはいなかった。
彼女は何も言わず僕の横を通り過ぎ、部屋を出て行った。


夜の八時を過ぎた頃、魅録からメールが入った。


“今日はサンキュー。
さっき別れ際に悠理に伝えた。
OKだと、悠理は言ってくれたよ”


僕はしばらく携帯電話の画面を見ていた。
胸の奥に鉛が沈んで行くような気分だった。
けれどそんな気配を感じさせないように返信をする。


“おめでとう。
これからは二人の時間も大切に。
今日はありがとう。おやすみ”


携帯電話を机に置き、部屋の電気を消す。
ベッドに行って毛布の上に座った時、そこに悠理が脱いだままのジャージーがあった。
僕はそれを手に取り、膝の上に置く。
そうしてじっとしていると、彼女の気配が感じるようだった。
まだそこに温もりがあるように思えた。
僕は目を閉じて目の前にいない彼女の存在を探る。
瞼の裏に、僕に何かを伝えようとする彼女の瞳が窺えた。








拍手[15回]

PR

コメント

お願い

誹謗中傷と思われるコメントや、管理人が不快と感じたコメントには一切お返事は致しませんのでご了承下さい。
また、ホストの拒否やサイト管理会社へ通報をする場合があります。
文章の描き方やブログスタイルが合わないようであれば、今後のご訪問はご遠慮いただくようお願い致します。

kotan 作品集

新作と過去作をアップしています♪
charm

その他の二次創作小説
いつか、どこかで・・・

kotanのオリジナル小説
大人の恋心
 ただいま調整中 リンクを外しています。。

カレンダー

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

hide

プロフィール

HN:
kotan
HP:
性別:
女性
趣味:
執筆
自己紹介:
有閑倶楽部のメンバー、それぞれの恋心を描きます♪

有閑倶楽部二次創作小説サイト様

Rummage Sale  管理人くらら様
Death Temper日記  管理人じんじゃー様

ブログ内検索

ブログバーツ

アクセス解析

バーコード

カウンター

忍者アナライズ