忍者ブログ

charm anthology

こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。

2013/09/22

中等部二年、二学期始め

ご訪問ありがとうございます。
作品への拍手が届いておりまして、とても嬉しく思っています。

本当にありがとうございます♪



本日もさらっとアップ。

いつも変なタイトルですみません。。














あれ、珍しい組み合わせ。



二学期が始まったばかりの中等部二年の昼休み、剣菱悠理はそう思った。
彼女は二階のクラスの窓際で、満腹になるまで食べた昼食後のまどろみの中だった。



学年会長と黄桜可憐が中庭を楽しそうに歩いている。
アイツの隣が、黄桜?白鹿じゃなくて?



彼女はすっかり目を覚まし、珍しい組み合わせの二人を窓から身を乗り出して覘き込んだ。



ふうん・・・



二人を見届け、教室の先を振り返る。
学年会長と同じクラスの白鹿野梨子が今、廊下を通り過ぎたように見えた。



喧嘩でもしたのかな。
まさか、ね。そんなワケないか。



そんな訳はない。喧嘩なんかしなさそうな仲なのだから、と彼女は思う。
たまたま、二人の用事が重なったのだと考え直す。用事とは・・・
けれど彼女の疑問はそこではなく、もっと違う何かだった。
普段とは違う何か。
白鹿野梨子と一緒の時とは違う、表情、笑顔だった。
その事に気付いた時、昼休みが終わるチャイムが鳴り、黄桜可憐が教室に入って来た。
悠理は自分が斜め前に着席した可憐の長いウェイヴした髪を引っ張った。



「ちょっとぉ!髪が乱れるじゃない!」



振り返った可憐は、化粧を直したばかりのように完璧な顔だった。



「さっき見たよ、中庭で。今度の彼氏は学年会長?」
「え?」
「あの白鹿から奪ったなんて、君の美貌には敵わないね、やっぱり」
「ヤダ。剣菱さんったら何言ってるの?美貌は認めるけれど、彼氏の件は間違ってるわ」
「だって楽しそうに歩いてたじゃないか」
「おほほ。気になるの?学年会長が、やっぱり」
「ち、違うやい!後で白鹿に睨まれちゃうぞ!」
「あのね、違うの。実は・・・」



可憐が身を乗り出して悠理に先程の件について説明しようとした時、五校時目の英語教諭が教室に入って来た。
この春異動してきたばかりの男性教諭は、可憐のお気に入りだった。



「あ、剣菱さん、ごめん。後でね」



可憐はそう言うと、急いでポーチから小さなミラーを取り出して自身のメイクをチェックすると、
宿題プリントを持って教壇へと向かった。
チッと舌打ちして、悠理は授業をサボるべくしてこっそり教室を出て行った。


校舎の北側にある裏山へと向かう。裏山と言っても小高い丘で、昼寝には相応しい場所だった。
木陰を陣取ると、幹に寄りかかるように寝そべった。



ああ~、気持ちいい。
英語の授業なんて聞いてられっか。



秋晴れて気持ちが良く、高くなった空にはうっすらと雲がかかっている。
昼寝にはちょうど良い気候だった。
遠くに見える飛行機雲の行方を追っている内に、彼女はうとうとし始めた、時・・・



「こらぁっ!授業をサボって何してやがるっ!!」
「ふぁあっ!はいっ!!」



びっくりして飛び起きる。
まさか、生活指導担当教諭がついて来ていたのかと彼女は懼れた。



「剣菱君。立ちなさい」
「は、はい・・・」



悠理はびくびくとして立ち上がり、ゆっくり振り返った。



「あ、あぁぁぁっ!菊正宗!」
「おやおやおや。僕の名前を覚えてくれていて、ありがとうございます」
「てめぇ、あたしをだましたな!?」
「だます?何をです?僕は学年会長として、不審な行動を取る女子生徒を追って来ただけです」



相手を知ってか、彼女は地面に座り込む。けれど今度は寝そべらない。



「戻らないの?授業に」
「戻んないよ、今更。それに戻ったって廊下に立たされるか、反省文を放課後に書くだけだろ。
戻るんなら、お前だけ戻ればいい」



ほんのちょっとの沈黙の後、学年会長は悠理の隣に座り込んで彼女の顔を覗き込んだ。



「クラスで何かあったんですか?いや、いつも・・・浮かない感じ」
「いつも?こんな感じじゃん、いつも。学校なんて面白くないよ」
「そうですけど。剣菱さんの笑った顔って、楽しそうに笑った顔って、見たことないな」
「見なくていいもん、そんなの。楽しくないし」



風がさらさらと二人の間を通り抜ける。
湿度が少ない分、風は冷たく感じられる。



「あたし、お前の楽しそうな顔、見たことあるよ」
「え?」
「さっき。黄桜と中庭歩いてた時」



そう言って今度は悠理が彼の顔を覗き込む。



「白鹿の時とは違って、嬉しそうな笑い顔だった。やっぱり黄桜の美貌には敵わないだろ?」
「ああ、あれね。彼女、生活指導で注意されたんですよ。髪型や化粧、それと・・・いっぱいね」
「ふうん。確かにね。あたしとは違う部類の違反だ」
「まあ、楽しかったですよ。彼女との会話はね。思ったより気さくな、感じの良い女子です」



そう言って彼は視線を悠理に向ける。
その目は、その表情は、余りにも彼女に向かって語られていない。
彼女は、急に淋しさを感じた。



あたしには、この表情なの。いつもいつも。
あたしといても、楽しくないもんね。
お互い・・・そう・・・



「僕といて、楽しくない?例えば、今」
「え?」
「話題が悪い?このまま君と一緒に授業をサボる訳だから。共犯でしょ?」



唐突な成り行きに彼女は混乱した。
そんな顔を見て、学年会長は声を出して笑う。



「そんな君の顔、初めて見た。困った顔も、ステキだ」



心臓が口から出そうなほど、彼女の心拍数は上がった。



「君はいつも僕に不貞腐れたような顔を向けるでしょ?
だから僕は、いつも君の心から笑った顔を見てみたいって思ってた。
きっと・・・君のそう言う笑顔って、ステキだろうって」
「ふ、ふざけるな」



悠理は視線を逸らして先程の飛行機雲の行方を追う。
けれど遠くの空には、雲の後さえ残っていなかった。
このまま立ち上がってその場を去ろうと決めた時、学年会長が低い声を出す。



「剣菱さん、動かないで」



えっ、と視線だけ戻すと、彼の長い指が彼女に伸びて来た。



「なに?」
「しぃぃ・・・」



その長くて綺麗な指は、彼女の頭の上に触れる。



「ほら、見て。トンボ」



彼の指先が摘んでいるのはトンボだった。



「あは。秋だね~」
「秋ですね」



四枚の羽が不自然に摘まれ、トンボは不機嫌そうだった。
二人は顔を見合わせて、こちらは自然な笑みが零れる。
ちょっと強めの風が吹いたと同時に、指先からトンボが放された。
遠くで五校時目の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る。
学年会長はさっと立ち上がり、もう一度悠理に手を伸ばした。



「さ、授業に戻ろう。六校時目は学年合同の合唱練習だ」



彼女は伸びた彼の手に触れることなく立ち上がる。



「分かった。戻るよ」



今度の二人には会話がなかった。
校舎に戻り、裏口にある汚れたマットで上履きの汚れを履いたまま拭き取る。



「いつもこうやってるんでしょ?」
「そうだよ」



じゃあ、と言って悠理がその場を離れようとした時、彼は彼女の腕を取った。



「待って。合唱練習、参加するでしょ?」
「うん」
「約束ですよ」
「約束、するよ」



二人はそのまま見つめ合う。
刹那、不思議な時間が流れる。言葉では表現できない時間。
彼が腕を放してくれないことに彼女は緊張を覚え、思わずその手を振り解いた。



「また見たいな、さっきの君の笑顔」
「・・・・・」



彼に向かって笑顔を作ろうとして、でも上手く作れず、彼女はそのまま背中を向けて走り去った。




六校時目の学年合同の合唱練習。
ステージに生徒が綺麗に並び、指揮をするのは先程の学年会長。
彼は指揮棒を振りながら剣菱悠理を探す。
彼女は、一番後ろの列にひっそりと並んで口を閉じている。
彼は彼女に視線を向け、目が合うと、彼女だけに分かるようにウィンクをした。



悠理だけに分かる、ウィンク。



彼女は充分にそれを理解し、真っ赤になって下を向く。
そんな彼女を見て、学年会長はとても可愛いと思った。









拍手[20回]

PR

コメント

お願い

誹謗中傷と思われるコメントや、管理人が不快と感じたコメントには一切お返事は致しませんのでご了承下さい。
また、ホストの拒否やサイト管理会社へ通報をする場合があります。
文章の描き方やブログスタイルが合わないようであれば、今後のご訪問はご遠慮いただくようお願い致します。

kotan 作品集

新作と過去作をアップしています♪
charm

その他の二次創作小説
いつか、どこかで・・・

kotanのオリジナル小説
大人の恋心
 ただいま調整中 リンクを外しています。。

カレンダー

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

hide

プロフィール

HN:
kotan
HP:
性別:
女性
趣味:
執筆
自己紹介:
有閑倶楽部のメンバー、それぞれの恋心を描きます♪

有閑倶楽部二次創作小説サイト様

Rummage Sale  管理人くらら様
Death Temper日記  管理人じんじゃー様

ブログ内検索

ブログバーツ

アクセス解析

バーコード

カウンター

忍者アナライズ