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こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。

2013/07/15

2013.07.12 土砂降り

お久しぶりです。
皆様の住んでいる所では暑い日々が続いていると思いますが、
体調を崩していないでしょうか?
 

私の田舎はまだ梅雨が明けておらず、じめじめした日が続いています。
近況はと言いますと、実はまだ変わっておりません。
ただ、この状況に慣れてきていると言った感じです。
 

前回の投稿後にコメントを下さった“たんたんたん様”、ありがとうございます!
心癒される温かなコメント、本当に嬉しかったです。
お返事の心遣いまでいただき、感謝致します。
 

こちらのブログもあまり放置はできないと思いながらも、いつも以上にまとまった時間が取れません。
けれど、毎日続く土砂降りの中の運転で、ふっと簡単な文章が思いつきました。
誤字脱字や文法的にも問題があるかと思いますが、今はこれが精一杯。
 

タイトルは、この文章を書き始めた日付と天候です。
 

どうぞご了承下さい。






 








あの日も土砂降りだったな・・・
 


彼女はふと思い出す。
つい三十分前までその記憶は温かく、切ないほど甘かった。
けれど今は、ただ、胸を何かで突かれているように痛い。
七月の雨は思いのほか冷たく、彼女の頬を濡らす。
 

 

土砂降りの中を走っていた。
傘なんて持っていない。
迎えなんて待てない。
誰かとの約束なんてしていなくても、走っていたかった。
嬉しい訳でも悔しい訳でも、急いでいる訳でもないけれど。走りたかった。
 


「悠理!」
 


突然腕を引かれた。
それはもう何年も前から閉鎖されたままの商店の軒下だった。
まるで、優しく引き寄せるようにされたから、別の意味で驚いた。
 


「清四郎!何で?」
 


肩越しに見える埃に塗れたシャッターの古臭さと、雨の匂い、そして男の匂いが入り混じった。
 


「図書館の帰り。悠理は?」
 


ゆっくりと体が離れて行くのがとても残念に感じたが、二人の距離は自然に離れた。
 


「別に・・・何か走りたかったから」
「こんな土砂降りなのに?」
「うん。こんな土砂降りなのに」
「あはは。悠理らしいですね」
 


それから・・・取り留めのない会話が続いた。
雨が小降りになるまで、多分二人の中で定めた時間まで。
気が付くと、雨雲の間から僅かな陽差しが洩れる。
雨で冷え切ったアスファルトは冷たい風を起こした。
 


「止みましたね、雨」
「うん」
 


けれど二人の足は前に進まない。
 


「そろそろ、行かなきゃ」
 


気持ちとは裏腹な言葉が、彼女の口から出る。
軒先に零れる雨の滴が、陽射しを受けて光を放つ。
それを綺麗だと思った瞬間、彼女はまた男の匂いを間近に感じた。
自分の名前が呼ばれるのを耳元で聴き、冷たい頬が温かなそれに触れるのを知った。
眩暈がして、でも、しっかりと身体が支えられ、初めて唇が塞がれる。
温かな、温かな、初めて知る甘い感触。
 

その後の事はあまり覚えていない。
ただ、一人通りを走り抜いた気がした。
 

雨、土砂降り、埃に塗れたシャッター、滴、陽射し・・・そして男の匂い。
全て、あの日の出来事は断片的な記憶として彼女の中に残った。
 

 

 

時々、気が付くと男を目で追っていた。
普段と変わらない表情や友達としての関係は、切なさと甘さを交差させたが、
彼女にはそれで充分に思えた。
背中に感じる視線も、たどり着くのは自分を悩ませる人物と知っていたから尚更だった。
 

ほんの少し前、男の声を聴きたいと言う衝動を抑える事ができたなら、こんな思いはしなかった。
あの日の記憶は、甘く切ない、二人だけが知る特別な思い出で済んだ。
緊張に震える手で携帯電話を耳元にやって数秒、男の声が彼女の名前を呼ぶ。
あの時とは違う、はっきりとした声で。
 


「悠理?どうした?」
「清四郎、今大丈夫?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
「あの・・・」
 


二人だけの記憶を呼び起こしたくて、ただ確認したくて。
けれど電話の向こうの男の声に入り混じるように別の声が聞こえた。
男も、自分も知る聴き慣れた女の声が彼女を決定的にさせる。
この夜の遅い時間、二人でいる関係と言うのは。
自分を含めた仲間達との時間とは、違うのだ。
この恋は、自分だけが心に秘めなくてはいけないのだ。
持久的に。この状態に慣れるまでに。
 


「ごめん。急ぎじゃないんだ。誰かいるなら後にするよ」
「別に、良いですよ」
「ううん。じゃあ」
 


また、自分の名前を呼ばれたような気がしたが、通話を切った。
もしかしたら、永久的に、そう思うと不遜の笑みが口元を緩める。
携帯電話をジーンズのポケットに押しやり、彼女はまた土砂降りの中を走り出す。
始まる前に終わった恋を冷ますように。
愛しい思い出として心の奥に仕舞えるように。
 

 

彼女は知らない。
押しやられた携帯電話に、男の想いが込められたメールが届いている事を。






 

 

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