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charm anthology

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2013/03/23

the two of us 2

こんにちは。
ご訪問ありがとうございます。

拍手も届いております。
とても嬉しいです!ありがとうございます!!


先日アップの続きです。
続き物にするほどの質でも量でもないのですが・・・
まとまった時間が取れなくて申し訳ないです。
どうぞお許し下さい。。











遠くで鳴ったクラクションが響き渡る。
同時に視線を交わし、清四郎は口を開く。
 


「悠理を傷付けてしまいました」
 


そんな事は分かっている。
だから、わざとらしい溜息を吐く。
俺の態度に気付いているだろう、フッと諦めたように笑みを浮かべる。
 


「今朝、彼女が僕に会いに来てくれたんです」
 


清四郎の意外な言葉に顔を向けると、普段と変わらない微笑を浮かべ俺を見ていた。
 


男山の散歩途中だって、玄関を出た僕に彼女は言いました。
それで今、魅録の所に一緒にいるんだって分かりました。
 

 

 

彼等はそれからほとんど会話らしい会話をしないまま、近くの川辺まで歩いた。
初夏を思わせるほどの温かな陽射しは彼女の頬を染め、久しぶりに見る笑顔に彼は安堵した。
でも、男山が彼を警戒しているのを感じ、きっと今の彼女の心情を表しているんだと知った。
 


「あたし、みんなと出逢えて良かった」
 


リードを外された男山は、それでも彼女から離れる事なく傍に座り、彼女もそんな男山に腕を回して寄り添う。
まるでその姿は、何年も連れ添った夫婦のように自然で通じ合うものがあった。
 


「だって、みんなもあたし達が好きだから」
「・・・・・」
「あたし、清四郎を好きになって良かった」
 


だって清四郎も仲間としてなら、あたしを好きでいてくれるもん。
 


「でも今のあたしじゃ、まだ足りてない。そうだよね」
 

 

 

あの日、悠理が俺の部屋に突然入って来た時、見た事がないほど狼狽えていた。
“清四郎があたしを、別の誰かに仕立て上げようとしてる”って、唇を震わせて言うんだ。
お前達が婚約した時の騒動を思い出したよ。
でもあの時と、状況が違う。二人の感情も違う。
大声を上げて泣く事もせず、蒼白になって震えて床に座り込んでるの見てさ、こいつ壊れるって、正直思った。
このまま放っておいたらこいつダメになるって、本当に思った。
清四郎は辛そうに息を吐いた。
 


「ずっと、彼女に憧れていたんです。幼稚舎の頃からずっと」
 


天真爛漫で誰よりも元気があって、乱暴だけどそれが彼女の正義感を表す姿だって分かった時、
滑稽なほど自分が喜びに溢れているのに気付きました。
僕にないものをたくさん持っていて、いつもキラキラしていて、こんな女の子もいるんだって思いましたよ。
 


穏やかだった夕焼けは、不自然な配色で空を覆っている。
悠理が、部屋に戻っているに違いない。
 


僕の彼女への想いは自分が知る以上に強く、彼女を欲しくなればなるほど狂暴になった。
だから僕の心の内を気付かれないように必死に隠そうとするほど、彼女には冷たくなってしまった。
焦がれる想いは、ありのままの彼女を否定する事で抑えた。
そうして彼女の想いは、僕への恐怖心で一杯になって、伝わらなくなってしまった。
 

 

 

「あたしどんなに清四郎に冷たくされたって嫌われたって、好きだよ。」
 


川辺を通り過ぎる風は強く、それは心の奥底まで浸透するように冷たかった。
彼女は風に向かって微笑み、それから清四郎をしっかりと見つめて言う。
 


「清四郎。あたしが清四郎に相応しい大人になれたら、もっとちゃんと好きになってくれる?」
 

 

 

そうじゃないんだ、と俺ではない誰かに呟く。
 


「悠理は僕にとって充分な女性なんです。今のままで良いんです」
「だって」
「僕は今の悠理を、独りの、たった独りの女性として・・・欲しいんです」
 


やがて来る暗闇を避けるように、公園内の外灯が灯る。
 


「そうなるには、彼女はまだ幼いでしょ?強引にそうなったら、今よりも傷付けてしまうでしょ?」
 


恋愛に不器用な俺に、清四郎は不安げに聴いてくる。
 


「彼女が欲しい。けれどそうする事で、彼女を失ってしまう事が怖い」
 


砂を踏む音に気付いて振り返った時は遅かった。
悠理はすぐそこまで来ていて、薄明かりに映る彼女の表情は人形のように白かった。






 

 

 

 

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