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2013/03/02

心変わりは気付かぬうちに 2

こんばんは!
ご訪問ありがとうございます。

サイトのトップページも落ち着いているようです。
そろそろ「テスト・・・」を外そうかな♪


さて、本日は「心変わり・・・」の続編です。
よろしくどうぞ~♪













翌朝。
 

豊作兄ちゃんの返事はやっぱりオーケーで、次の日に学級委員長にその事を伝えた。
 


「え?今日でもいいの?」
「いつでもいいって。今週は家で仕事してるから」
 


年が離れているせいもあって、豊作兄ちゃんはあたしに優しい。
 


「へぇ、学級委員長さんが家に来るの?悠理もちゃんとしたお友達がいるんだね」
 

って。
別に友達なんかじゃないし・・・って言ったら、イミシンな顔で笑ってた。
 


「じゃあ、放課後ね」
「校門近くで車を待たせっとくから。来てくれる?」
「もちろんさ!」
 


あたし達は笑顔でそれぞれの席に戻る。
周りのクラスメイトが不思議そうな顔をしていた。
そうだよな~。
いつもは睨み合ってばっかだもん。
ま、それでも教室の隅で睨んでるヤツもいたさ。
大切なお友達をあたしに取られたと思っている、金魚のフンがさー。
 

放課後、真っ先に学級委員長はあたしの迎えの車まで来てくれた。
失礼しますって、ちゃんと運転手に挨拶までして。  
車は、あたし達が座ったのを確認してから出発した。
特に話す事がなくって話題を探している内に、学級委員長は言う。
 


「今日はありがとう」
「あ、いや。別に・・・たいした事じゃないし」
 


何だか分かんないけれど心臓がドキドキして、顔を上げられなかった。
だからあたしは視線を窓の外に移す。
学園に通う生徒でも、徒歩で登下校する子達は少なくはなかった。
この学級委員長も、そう。
いつも誰かさんと仲良さげに歩いてるさ。
通学路は、既に何人かの生徒が歩いていた。
 


「あ・・・」
 


いつもよりスピードを出さない車は、クラスメイトの後姿を捉えた。
 


「白鹿だよ」
「野梨子?」
 


学級委員長はあたしの体に被るように身を乗り出して窓ガラスに近付いた。
彼女もびっくりしたようにこちらを振り向く。
 


「乗せようか?」
「え?いいよ」
「白鹿も一緒に行こうよ」
「野梨子は行かないから」
 


学級委員長は笑顔でそう言う。
あたしは自分よりもかなり大きい体が上にあって、身動きを取る事ができなかった。
だから通り過ぎるまで、そうしている事しかできなかった・・・
 


「僕が剣菱さんちの車に乗ってるから、びっくりしてたね」
 


のん気にそんなコト言って、って思った。
 

でも、あんな顔、初めて見た。
今にも泣きそうな、でも、強いプライドが自分自身を許さない、そんな感じの顔。
口元は笑っているけれど、細くなった目は零れ出る涙を止めているよう。
辛くなって顔を背けて車内に目を向けた時、目の前にいたやつの顔ときたら!
小さな子供のように無邪気に微笑んで、後ろに小さくなる幼馴染に手を振っていた・・・
 

 

 

夜明け前、あたしは窓辺に向かう。
カーテンを細く開けると、うっすらとした光の中で庭木の枝々が黒く色を塗られたように濡れていた。
昨夜降った雪のせいかも知れない。
雪はもうないけれど、しんっとした空気がその気配を表していた。
そしてその気配は、部屋の中まで浸透していて寒かった。
 


今でも忘れられない。
あたし達はまだまだ子供で、恋愛なんて知らなくて。
それでもあの目は、恋を失った女の顔をしてるって思ったんだ。
男の子を好きになった事もない“あたし”が、そう直感したんだ。
だから傍にいる学級委員長の存在が彼女を傷付けているって分かった。
あの日の後、あたしはしばらく学校を休んだ。
二人の顔を見るのがイヤだったから。
心配して、あるいは学級委員長として訪ねて来てはくれたけど、会わなかった。
 

・・・その後、仲間になるまでどうやって過ごして来たのかは覚えていない・・・
 

 

 


「眠れないの?」
 


突然後ろから声をかけられて振り向く。
あの時の学級委員長が、ベッドの上で、ブランケットの中からあたしに声をかける。
 


「ん、ちょっと目が覚めちゃって」
 


いつから隣にいる相手が彼女からあたしに代わったのか、それも覚えていない。
それとなくあの頃のあたしについて彼女に聴いてみても。
 


「清四郎は幼稚舎の頃から悠理を気にしてよ。私は初めから知っていましたわ。
いつかこうなるって、分かってましたもの」
 


そうなの?
じゃあ、野梨子の想いはどこに行っちゃったの?
 


でも、そんな事までは、聴けない。
 


あたしは、いつから学級委員長を見ていたの?
あんなに敵対していたはずなのに、ね。
 


吐く息で強化ガラスが曇る。
冷たい窓ガラスに指で触れ、その曇りを拭う。
よく見ると庭木の枝には、赤く芽吹く小さな粒がたくさんなっていた。
 


「悠理、ベッドにお戻り。風邪ひくぞ」
「うん」
 


さっきより明るくなった庭を見渡してからもう一度カーテンを閉める。
春はもうこの窓辺に近付いているのに、この夢の後はいつも・・・
いつも寒さで震えてしまう。
 

あたしは振り返ってベッドに戻る。
すっかり大人になった“彼”は、あたしの為にブランケットを開ける。
 


「身体が冷たくなってる」
「清四郎、あったか~い!」
 


ぎゅっと抱き締められてから顔を見合わせる。
そこには、あの日の子供っぽい笑顔がある。
こうした時の笑顔は、あたしだけが知っている・・・多分。
 

また、胸が苦しくなる。
 


「どうした?」
「え?ううん」
 


清四郎は、またあたしを抱き締める。
 


「何があったって、僕は悠理の味方だよ」
 


あたしが不安そうな顔をすると、いつもこう言ってくれる。
 


「ナンでもないって!誰とも喧嘩なんかしてないし」
 


喧嘩なんかしていない。
誰とも、メンバーとも、野梨子とも・・・良好さ。
 


「そう?ねぇ悠理。人は誰かを傷付けずして生きてはいけない」
「・・・・・」
「僕だって悠理だって、傷付く時も傷付ける時もあるさ。
でも人はそこから学び、成長するんだよ」
 


あの時の互いの傷が癒える時、あたし達は成長するの?
野梨子は、もう何かを学んだのだろうか。
 


「今の幸せに感謝して、大切にしていく事だよ」
「うん。そうだね」
 


あるいはあたし自身、もう学んだのかも知れない。
 

今のこの幸せが逃げないよう、あたしも清四郎の背中に手を回した。







 

 

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