こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。
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魅録がすっごく嫌がったけれど、いてもたってもいられなくって押し掛けた。
どうしてもって言ったら、やっといつものように部屋に入れてもらえた。
「どうしてダメなんだよ?」
「だって誤解されっだろ?彼女でもないお前が部屋に入るなんてさ」
「いいじゃん、友達なんだから」
「友達ったって・・・ダメなんだよ、もう」
そう言ってフッと目を逸らして、背中まで向けられた。
一瞬目が合ったけれど、その目は怒気を含んでなんかいない。
ちょっと悲しそうだったかな、独り善がりかも知んないけど、多分。
「なんでさ?魅録に彼女ができたからって、どうしてあたし達の関係までかわっちゃうの?
どうして今までどおりにならないの?そんなん、おかしいよ」
困った顔の魅録を責め立てたけど、いつまでたっても言葉にしてくれないから、あたしは口を噤むしかなかった。
夕焼け色に染まり始めた空が、小さな窓から見える。
持て余すように窓辺に凭れかかる魅録は、何時なくかっこいい。
ちょっと見蕩れてたけど、もう自分だけが見れる特権じゃないって分かったら何だか泣けてきた。
「なあ、誰なのさ、彼女って。あたしの知ってる人?」
「おしえない」
「誰にも言わないからおしえてよ。みんなは?同じ学校?」
「まだ、知らなくていい」
「絶対言わないし、あたしも知らないふりする。ね?お願い!!」
「ダメ。まだダメだ」
「ナンだよ、ケチ!減るもんじゃないだろ?」
「なあ、悠理」
魅録はやっとあたしを振り向く。
諭すようなその目は、さっきと同じ愁いを帯びていて、見ているこっちが辛くなる。
「落ち着いたら話す。約束する。今は、彼女との関係を大切にしたいんだ」
今まで経験した事がない痛みが、あたしの胸の奥へと浸透する。
何かが喉まで込み上げたけど、なんとかそれを呑み込み、納得するふりをする。
「分かった。約束してね」
「ああ」
魅録の安心したような顔が、全てを物語っていた。
あたしを傷つけまいとする行為が、深い悲しみを与えているって事くらい分かってくれよ。
「あたし、この部屋にはもう入れないの?」
「仲間とだったら入れるさ」
「魅録の、親友なのに?」
「悠理・・・」
「分かってる、ごめん」
親友と言う言葉が、魅録との関係を繋ぎ止める。
親友でしか、ない。
それ以上も、それ以下もないんだ。
部屋の中に夕焼け色に染まった陽射しが流れ込んでくる。
あたしはゆっくりと窓の正面にある壁に移動し、跪く。
「もう少しだけ、ここにいさせて。ここから見る風景が大好きだったんだ。
この夕陽が見えなくなってしまうまで。
そうしたら、帰るから」
「悠理」
「お願い。今だけ。もう独りじゃあ、来ないからさ」
魅録は何も言わずに、いつもの、優しい目であたしを見つめてくれる。
今は、今だけは、魅録と二人きり。
魅録の瞳には、あたししか映っていない。
そこに、最後の、あたしへの特別な思いがある。
こうやって二人きりでいるのも、これが最後。
この部屋を出たら、親友と言う深い絆で結ばれた、変わらない関係だけが残る。
分かってる。
分かってるよ、だから・・・
わがままを許してね。