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charm anthology

こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。

2012/05/04

月の魔力

こんにちは!
連休はいかがお過ごしですか?

私は関係なく、ずうぅぅぅっと仕事です。。

昨日からお天気は雨ですが、お花見はできました!
退勤後の日曜日の夕方に、温泉郷をお花見ドライブ♪

次の日曜日はお休みなので、何とかG.W.らしく過ごしたいですねぇ。


さてさて、久々のお二人さんを登場させてみました。
部内恋愛とは程遠いけれど。
良かったらお立ち寄り下さいませ♪


ご訪問ありがとうございます♪
















「満月に不思議な力があるって知ってる?」
 


突然後ろから声をかけられて、可憐は息を呑んで振り向いた。
 

週末の別荘。
仲間達と、剣菱が所有する湖の辺。
 


「やだ、美童。びっくりするじゃない」
 


真夜中。
眠れない彼女が、湖に面するリビングのテラスにいた。
 


「ん・・・ごめん」
「それに今夜は満月じゃないわ」
 


不完全な形の月・・・蒼い月が雲ひとつない空で光を放っている。
 


「そう。満月は、明日」
「美童も眠れないの?」
 


返事をしない彼を見つめる。
彼は・・・月の放つ光をそのまま受けるように、蒼く長い髪を緩やかな風に靡かせている。
 


「満月になると、人は不思議な感情を持ち、行動するのさ」
「・・・・・」
「月の魔力によってね」
「美童・・・」
「でも、満月。見逃しちゃいそうだな」
 


彼はそう言うと目を瞑り、暫くの間月の光と風を受けていた。
普段とは違う雰囲気に戸惑っていると、それを気遣うように彼女を振り向き笑顔を見せる。
 


「眠れないんだね。まだ踏ん切りがつかないの?」
「違うわ。ただ、納得いかない事はあるけど」
「可憐のような女の子を振るなんて、大した男じゃないさ」
「あは。ありがと」
 


美童の言葉に癒されるように、彼女は心赴くままの笑顔を見せる。
 


「月の魔力で、未来は変えられるかしら?」
「例えば、どんな風に?」
「例えば・・・」
「例えば、もう一度彼が可憐を振り返って・・・とか?」
 


有り得ない現実を受けている彼女は、途方に暮れたように蒼い月を見上げる。
 


「未来って、決められているのだと思う?それとも、築き上げるものなの?
ちょっと先の事も分かんないわ」
 


美童はそんな彼女を見つめる。
 


「人には運命がある。生まれてから死ぬまで、粛々と敷かれた運命と言う道を歩いてる。
僕はそんな風に思っている」
 


可憐はゆっくりと美童に視線を向ける。
 


「ナンか、つまんないけどね」
 


彼女の視線は哀しげで、だから悪戯っぽくウィンクして見せた。
 


「でも先の事は自分じゃ分からない。運命があるのかさえ誰も説明できない。
失恋する事さえ・・・だから人生は面白い」
「意志や結果も何もかも全て、運命と言う作用なの?
自分が決めていると思っていても、本当は違うの?」
「自分の思いや意志はとても大切。だけど全ては必然と言う運命の中で生きてるんだと思う。
女の子を振っちゃった事も。そうなった事が必然って受け入れる事でまた始まる。
でも、あの時彼女の言い分も聴いてあげれば良かったなぁって思う事も、とても大切だよね。
堂々巡りだけど」
「そんな風に、運命に支配はされたくないわ。
自分の意志は関係ないとか、イヤだもの」
「それですらも、運命。受け入れる事で始まる」
「美童・・・」
「乗り越えられるよ。それに可憐には、仲間がいる」
 


彼女は、二階でぐっすり眠っている友人達を思い出す。
どんな時でも、どんな事があっても、傍にいてくれる彼等を。
 


「うん」
 


ふっと、暗闇が訪れる。
見上げると、うっすらとした雲が不完全な形の月を覆ってた。
 


「今夜の美童は、いつもとは違うみたい」
 


そう言って傍らにいあるはずの彼を見る。
 


「美童・・・」
 


そこには、僅かな月の光に照らされているリビングの窓。
揺れているのは、自分自身の影。
けれど、先程までの美童の存在は確か。
何故なら、彼が愛用している品の良い香水がまだ漂っているから。
彼女はまるで優しさに包まれているような安堵を覚え、微笑する。
 


「ありがと、美童。おやすみ」
 


彼が姿を消したリビングの先の階段を見つめる。
いつもと違う、彼。けれど彼以外の何者でもない。
形容するなら、頼もしい。
 


「月の魔力?それとも・・・でも、満月は、明日」
 


可憐はもう一度空を見上げる。
雲は消え、不完全な月はまるで完全な円を描くように蒼い光を放っていた。










 

 


 

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