こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。
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開け放された窓から強い風が入ってくる。
「ちょっと寒いわ。窓を閉めて」
そう、ブラウス一枚の私には寒すぎる。
「風は・・・」
風は吹き抜けるものさ。
あなたは言う。
ウィンド・チャイムがカランカランと音を立て、風の道筋を示す。
ぴゅう・・・
魅録が野梨子と付き合うようになってから、あたしは部室に置いてけぼりだった。
可憐と美童が気を遣うように出て行っちゃうから、余計にひとりぼっち。
そんなカワイソウなあたしの最近の居場所は清四郎の部屋。
だって清四郎も野梨子を魅録に取られてから、ナンだか淋しそうな顔してるんだもん。
あたしが
「傍にいてあげよっか」
って言ったら、
「うん」
って。
だからそれ以来、放課後は清四郎の部屋で過ごしてる。
でも最近気付いたんだ。
清四郎を元気付けようとして来ているはずなのに、あたし達の間に会話が少ない事に。。
「ごめんな、清四郎。役立たずで」
「そんな事、ないですよ」
きっと、当たり前の相手を失っちゃって、先行き不明状態なんだあたし達。
お天気の日曜日。デート日和。
あたしはまた清四郎の部屋で時間を過ごす。
カランコロン、カランコロン・・・
どこか懐かしい、優しい音色。
「清四郎、この音なぁに?」
「ウィンド・チャイム。ベッド脇の窓を見てごらん」
窓枠にそのウィンド・チャイムが下がってる。
そよ風に、カラカラ言って。
「キレイな音」
「姉貴がね、今朝、出してくれたんだ」
「和子姉ちゃんが?」
「うん。悠理が喜ぶからって」
「へえ・・・」
あたしはベッドに座って、ウィンド・チャイムじっと見つめる。
不揃いな金属棒が風に揺れてぶつかり合って、高い噪音を奏でる。
ぶつかり合っているのに、すごく音がキレイ。
清四郎のベッドに寝転がり、金属棒がぶつかり合って音を出す様子を見る。
ずいぶんと、長い時間。
開け放された窓からの強い風と、不安なほどの金属音で目が覚めた。
「清四郎、寒いよ。窓、閉めて」
Tシャツ一枚で寝てたから。
「悠理、風は・・・」
風は吹き抜けるものさ。
清四郎はそう言うと、あたしの顔を覗き込んだ。
今まで見たコトないほどの優しい顔で。
ウィンド・チャイムがカランコロンとまた高い音を奏でる。
風が、清四郎の部屋を吹き抜ける。
窓から、もう一つの窓へ。
カランコロン、カランコロン・・・
ウィンド・チャイムの音色は、風の道筋を示しているみたい。
カランコロン、カラン・・・
ね、清四郎。