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charm anthology

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2012/04/07

キミトミタ・・・

こんばんは。


どうも、こう・・・ブログの空気が淀んでいるような、そんなような・・・

ちょっとパッと明るい感じに♪と思って小ネタアップです!
明るいかどうか分かりませんが(笑)。


私の田舎を基準に考えて即行で書き上げたので(笑)。
皆様のお住まいはもう暖かいですね、きっと。

4月になっても、毎日雪を見ています・・・




良かったらどうぞお立ち寄り下さい。。

では、では。












剥き出しの土の上にレジャーシートを敷いて寝転ぶにはまだちょっと早い四月の日曜日。
悠理は清四郎と二週間ぶりのデートを楽しんでいた。
水辺に近い広域公園のアスレチックで体を動かし、お弁当を食べてベンチに寝転ぶ。
昼下がりの風が心地よい。
寝転ぶ彼女の横で、行儀良く座って遠くを見つめている清四郎の存在もまた。
 


「う~んっ!」
 


悠理は思い切り身体を伸ばす。
 


「気持ちぃー♪」
「春ですね」
「春だなー」
「芽吹いた桜も蕾が花開くばかりに準備され、そろそろですね、花見」
「うん!計画しょっ!今年はどこ行くかな」
「そうですね。悠理が行きたい所で良いですよ。僕も行きたい」
「うふふん♪」
 


何とも幸せいっぱい腹いっぱいの二人の頭上を、白い大きな鳥が優雅に飛ぶ。
 


「うわっ、白鳥だ!まだいたんだ。今からシベリアまで帰るんだな」
 


悠理は体を起こして立ち上がり、両手を大空に向けて振った。
 


「さようならー。気を付けて行くんだぞ!また来年なー」
 


後ろで座ったままの清四郎が、呆れたように声をかける。
 


「悠理・・・あれはサギだ」
「へ?サギ?サギってナニ?」
「・・・・・」
 


彼女は照れくさそうにベンチに座りなおす。
 


「へへっ。間違えちゃった」
「まぁ、似てなくも、ないですからね」
 


ちょっと気まずい雰囲気を壊してくれるように、清四郎の携帯電話にメールが受信される。
 


「あ、清四郎、メール」
「ええ。あ、魅録ですね」
 


なになに?と、横から覗き込む。
 


“明日、いつもの喫茶店で。時間は六時でいいか?”
 


小さく息を呑む気配に、清四郎は悠理を振り向く。
彼女は携帯電話を指差し、目を剥いて叫んだ。
 


「あああっ!やっぱりそういう仲だったのか!」
「違いますよ」
「前から怪しいって思ってたんだ。時々二人でコソコソしてるだろ?
あたし以外にもこうして約束してぇ~」
「違いますって。僕が所属する同好会に、ちょっと顔出してみたいって言うから。
ESP研究会ですよ。大学に入ったら、魅録も英語を専門的に学びたいってね。
心配なら悠理も一緒に行く?」
「い?い、いやあ・・・英語?・・・そうだったんだー。ならいいんだ。安心しちゃったし♪」
 


クスクスと清四郎は悠理を見て笑う。
彼女は極まり悪そうに彼の携帯電話を閉じたり開いたりしている。
 


「ねぇ、この待受画面、変えたら?変な模様。これなーに?斑の白」
 


清四郎は携帯電話を大事そうに取り上げ、画面をいとおしむように見つめた。
 


「これはある日の空です。
悠理。僕は、実は・・・この空から舞い降りたんですよ」
「え?ホント?」
 


45cf4a46.jpeg  




  薄らとした水色に、斑の白。
 





「ぶぇ~。んなワケあるか。空ねぇ。
どう考えたって、清四郎は土から這い出た感じだよな」
「僕はゾンビか」
 


画面を興味深そうに見つめ、首を傾げる。
彼女には、その画面が空の写真に見えないらしい。
 


「まぁ、空から舞い降りたのは冗談として。
でもその空は、僕にとって特別な空なんです」
 


ん?と悠理は眉間に皺を寄せて彼を見つめる。
そんな仕草を、仲間は彼に似ていると言う。
成程、長く一緒にいると似てくるのかも知れない。
 


「この空は、悠理と初めてデートした日に一緒に見た空なんですよ。
今日みたいに気持ちの良いお天気で。
悠理が始終“綺麗だ。綺麗だ”って空を見上げては言っていた空なんです。
 

だから僕にとって特別な日の、特別な空なんです」
 


清四郎は真っ直ぐ悠理を見つめ返す。
彼女は思い出したように澄んだ茶色い瞳を大きくした。
それから嬉しそうに頬を染めてにっこりとする。
 


「思い出した。あの日、綺麗な空だった」
 


彼も嬉しそうに頷き、それからゆっくりと視線を空に移す。
 


「今日の空も、あの日のように綺麗ですね」
 


彼女もその視線を追うように空へと移す。
 


「うん」
 


清四郎の手に、悠理の小さな手を感じる。
彼は自分の指を彼女のそれに絡めた。
 


「悠理と見る空は、いつでも、どんな時でも特別です」
「うん」
 


心地よい風が、また二人を吹き抜ける。
 


どんな時、どんな物でも一緒に見れば・・・なんて、声に出さずに二人は思った。









 

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