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2012/03/10

Last Valentine 4

本日で完結です。
 

何とか間に合いました~♪
 


最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!!





 









日曜日の午後の陽射しがまったりと室内に流れ込んでくる。
先程運ばれて来たコーヒーの香りが心地良い。
 


「うう~ん」
 


目を瞑って、まるで静かな喫茶店にいるかのような気持ちだったのに・・・
 


「解けた?」
「まだ。ちょっと一休みしたら」
「ダメ!五分前にケーキ食べたばかりでしょ」
 


今週から始まる三学期期末テストに向けて、僕は悠理の家庭教師に。
これだって、高等部になってからの恒例行事。
いつもは嬉々として鬼教師になるけれど・・・もう、やる気ないや。
勉強したくないこいつと一緒。やる気なんて、ない。
 


「清四郎~。おねが~い。ちょっとだけ、休憩」
 


さほど難しくもない問題なのに。
いつもならやり過ごす時間だけど、気になってしまう。
 


ねぇ、あの事覚えてるの?
僕はあの日以来、君を違う目で見るように試みてる。
距離をおいて、友達として、仲間として付き合っているつもり。
頑ななほどの冷たい君の心を、もう感じたくなんてないからね。
 

 


去年のホワイトデー。
僕はあの赤い紙袋のお返しに、銀でできた猫のストラップを淡いピンクの包装紙に包んであげた。
“Thank You Very Much !”って印刷されたカードに、
 

“これからも、君を助けられるように傍にいるよ!”
 

って返事を書いた。
一ヶ月近く考えて、友達とはちょっと違う感情を持っているって感じたから。
三日間も悩んで、ホワイトデーのお返しとメッセージの言葉を考えた。
 


あの日・・・
わざと生活指導と掲げて、放課後の指導室に呼んだ。
君は真っ赤になって怒ったけれど、僕のお返しにさっきとは違う赤に頬を染めた。
まるでその表情は、バレンタインの日の放課後のようで。
それは、君の心情も表していると僕は取ったんだ。
 

野梨子や可憐とは違う、特別な僕の想いを君も感じ取れたはずさ。
 


ホワイトデーの後の週末、僕達はいつもと違う時間を過ごした。
仲間達と過ごすのが常となったばかりだったけれど。
 

君は待ち合わせ場所にたったの十五分遅れて来ただけで、
片手には僕があげた銀のストラップをつけた携帯電話を握り、その手を振った。
キラキラと輝いたそれは、僕達の未来を表しているかのよう。
 

待ち合わせの駅前から、賑わう週末の街を二人で歩いた。
僕達の不自然な距離も、夕暮れ前には測る事が不可能なほど。
 


ねぇ、本当に忘れたの?
別れ際、君の家の裏門で触れただけの口付けを・・・
 

 

 

「やっぱムリ~!休憩ダメなら答え教えてよ!」
「さっきの例題に当てはめて考えろ」
「ちぇっ」
 


信じられなかった。
口付けの翌日に、君は僕にどんなメールを送った?
 


“昨日のコト、忘れちゃいたい”
 


普段は沈着冷静な僕が抱いたこの想いを、君は簡単に引き裂いたんだ!
 

もう馬鹿は見たくないからね。
君が僕をどう思っているかなんて、今、君を悩ませている数学の問題よりも簡単さ。
 


「清四郎ちゃ~ん。お・ね・が・い。ね♪」
 


ほらまた、そんな目をして。
僕を騙そうたって、もうムリだよ。
 


「悠理、バレンタインのお返し。考えてる?」
「え?バレンタイン?」
「ほら、僕が悠理にあげたでしょ?あれ」
「ええ~!テーブルの上にあった、誰かがもらったチョコじゃん!」
「そうでしたっけ?なら・・・ん?」
 


僕は目を疑う。
棚の上に無造作に置いてある見覚えある携帯電話。
 


「あれ?この携帯は?」
「前んだよ。今は新機種。ん・・・あっ!!」
 


手を伸ばしてももう遅い。
僕が手にした携帯電話には・・・去年あげた銀のストラップ。
 

君の真っ赤な顔に、また騙されてしまいそう・・・
 


「よく持っていたじゃないですか?もう処分したと思ってました」
「だって・・・けっこう、気に入っていたから」
「ふうん」
 


僕の頭に悪知恵が浮かぶ。
 


「僕の質問に答えたら、その問題を教えてあげましょう」
「え?ほんと?」
 


今日は多分、僕から逃げられない。
去年の、あの理由を聞くまではね。
 


「ねぇ、悠理。どうして・・・僕との事を忘れたいってメールしたの?」
「え?なに?なんのこと?」
「去年のホワイトデーの後の事。忘れた?週末のデート」
「・・・・・」
「僕は悠理からのバレンタインで、君をいつでも助けられる距離でいたいって思ったのに」
「・・・うん」
 


今こそ、理由を聞かなくちゃ。
 


「悠理?」
「メッセージ、嬉しかったよ。でも・・・」
「でも?」
 


目を逸らして、俯く。とても言い難そう。
でも、辛抱強く待つ僕。
逃す訳には、いかないんだ。
 


「でも・・・助けてあげるのは野梨子だから。あたしは、自分で戦えるから」
 


そう思ったから、メールしたんだよね。
野梨子が悲しんじゃったら、せっかく友達になれたのに、また前みたいになっちゃうって思った。
 


一瞬、頭が真っ白になったけれど。
君は一体、今まで何を見てきたの?
この一年間で、何を知ったの?
 


「喧嘩はそうかも知れないけれど。それ以外、君独りで何ができる?」
「あ・・・うん?」
「助けるのは、喧嘩だけじゃない。勉強だって、遊びだって。そうだろ?」
「うん」
 


君は僕に想いを告げた。
僕も、君への想いを知った。
 

今、この時は、僕だけのもの。
 

今が、僕達に与えられたチャンス。
 


「もう一回、去年のバレンタインをやり直そう」
「でも・・・」
「遠慮なんていらない。誰も悲しんだりしないから」
「そうかな?」
「もっと僕を知って。そうすれば、きっと不安な気持ちが消えるはずさ」
 


そう、もっと僕を知る為に、僕の近くに来て。
 


「もう一回、やり直そう」
「うん」
 


俯き加減の君が僕を見上げる。
あのバレンタインの日のように真っ赤で。
だけど、はにかんだ笑顔に安堵感が窺えるのは、自分本位?
 

こんな君なら、また騙されても良いって僕は思う。
 


ずっと・・・騙されっぱなしでね。










 

 


 

拍手[20回]

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コメント

1. よかったー!

 騙されてるんじゃない、騙されたいんだ!!(笑)な清四郎くんでしたね。悠理ってばいろんな意味でまっすぐだから、傍から見るとあさってになっちゃうのかも?初デートで初ちゅーして次の日失恋って!そりゃ清四郎くんもびっくりですよね。(笑)
なんにせよ、言葉の足りない二人、うまくいってよかったですー!
ドキドキな展開、楽しませていただきました!!
kotanさま、お疲れ様でした!体調の方もごむりなさらないでくださいね。

じんじゃーさま

いつも感想をありがとうございます。
なんとかホワイトデーに間に合って安心しています。

騙しているつもりは悠理にはないんだけれど、
やっぱり一言いってくれればー(笑)。
高等部一年だからなかなか不器用な感じだけれど、この二人は特に!
もうちょっと、甘えちゃってもいいのにって思います♪
お勉強以外でね(笑)。

体調はかなり良くなりました。
震災からちょうど一年と言う事もあり、今日は家で静かに過ごしています。

いつもありがとうございます♪

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