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charm anthology

こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。

2011/10/26

kiseki 6

こんばんは。

大変お待たせして申し訳ございません。

「kiseki 6」をアップしました。










通りで起こった事件は、友人達が駆けつけた事によってそれ以上大きくならなかった。
ただ、清四郎に抱えられる野梨子を唖然と見つめる魅録の目は、
一瞬にして恋人を見つめるそれでないのは明らかだった。
近寄る野梨子を、撥ね付けるような態度で接する彼を誰も止められなかった。



「これ以上あいつと関わらない方が良いとあの時言っただろ?
だからあいつも田舎に帰ったんだろ?
何で二人が、こんな所で騒ぎを起こしてるんだよ?」



混乱しながら説明する野梨子を言葉で責め、最後には背を向ける。
ただ震えるだけの彼女を悠理は抱き締めた。



「魅録、分かってやれよ!しょうーがないコトじゃないか!」
「仕様がない?・・・ああ、そうだな」



千秋さん、待たせてるから。



そう言うと、彼はその場を去った。

 

 

 

また一つ、季節が過ぎた。
もう少しもすれば、山々で彩り美しい紅葉が見れる。
気温が下がる事で葉の色が変わってしまうのだが、幼馴染はあっさりとこう言った。



「葉の老化現象ですね、一言で言うならば」
 


自然現象ですらロマンチックに考えたい可憐は呆れていた。
ああ、だから年は取りたくないわね・・・そう呟きながら。
 

数年前の今頃は・・・と思わず考えて首を振る。
過ぎた過去を想っても、戻る事は無い。
 

それでも時々煮え切らない思い、あるいは自分の行動が、
まるで昨日の事のように繰り返される。

 

 

 

背を向けて去った魅録から、何の連絡も無いまま過ぎた苦痛の時間。
耐えられずに野梨子は、夜中に携帯電話を手にした。
 


”あの日、本当に偶然に再会しましたのよ。
決して連絡を取り合っていた事はありませんわ。
確かに、彼には黙っていて欲しいと頼まれてしまいましたし。
それにあんな風に通りで囲まれて、どうしようもなかったんですの。
誰か助けを呼ばないと、彼だけではあの人数は無理でしたわ。
だから、清四郎と悠理を呼びましたの。
 

魅録に連絡をしなかった事は謝ります。
ただ、特別な感情を持って彼と会っていたのでは無いと信じて欲しいのです”
 


疲労と睡眠不足が続いているのにも関わらず、眠る事が出来ない。
どこか朦朧とする意識の中で、携帯電話は受信を告げた。
今までに無い程の緊張感だった。
 


”野梨子の中で、あいつと会っていた事に後ろめたさを感じていたんじゃないのか?
悪い事をしているって言う。
 

俺がどんなに辛かったか分かる?
通りで起こった騒ぎを聞いた時、嘘だって思った。
なんでいるはずの無いあいつと野梨子がって。悠理の冗談だろうって。
最後まで嘘だって言い続けた俺の気持ち、分かる?
 

最後まで野梨子を信じようとした俺の気持ちが理解出来る?”
 


胸に鋭利な刃物を突かれるような思いで、受信したメールに目を通す。
 


”本当に偶然の再会でしたし、騒ぎを予期できませんでした。
それに、折角お休みを取って家族と過ごしている魅録に、迷惑をかけられないと思ったんですのよ”
 


いつものように、会話のようなメールが続いた。
 


”迷惑?なんで?野梨子を守ると約束したのに?”
 

”ええ、でも、彼が、黙っていて欲しいと”
 

”なるほど。偶然の再会を、秘密にして欲しいと。
これからも秘密で会いたいと言ったら、野梨子はどうしたんだろう”
 

”そんな事はしませんわ。
魅録、信じて。あの騒ぎは避けられませんでしたの!
一刻も早く助けを呼ばないと、大きな事件へと繋がると思ったの”
 

”俺が、いるだろ?
これからは俺が野梨子を守るって、約束しただろ?”
 

”魅録、何度も同じ事を言わせないで下さいな。
家族と過ごしている時間を、壊したく無かったのですわ”
 

”もう何を言われても言い訳にしか思えない。
あいつの事でまだ問題があるのなら、いつでも相談にのるよ。
別に俺は、遠くに行く訳でもないし、学校以外に何処かに行く事は無いんだから。
メールが来たら必ず返信する、それだけ”
 


呼吸する事が、こんなにも困難だったとは。
 


”お願い、私から去らないで!”
 

”一度離れた気持ちは、もう元に戻る事は無いよ。
野梨子も辛いだろうけれど。
俺は、このままこの関係を続けていく事は出来ない。

野梨子の悲しみと同じように俺の悲しみだって・・・計り知れないよ”
 

”魅録、私を信じて!お願い!”
 

”ダメだよ。もう、ダメなんだ”

 

 

 

野梨子の部屋の窓辺に、はらり・・・と色付いたばかりの葉が一枚落ちた。


 


 

拍手[6回]

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コメント

1. うわあ・・・・。

 そーいうことだったんですかあ・・・・。
 なんかすごい魅録の気持ちとか野梨子の気持ちとか・・・納得してしまいました。
 魅録ってやっぱりすごく男の思考で、野梨子ってものすごく女の思考なんですね。
 こういう分かり合えない感じって、つらい・・・。
 でも一人の人間であるより先に男であったり女であったりするのかもしれないですね。
 kotanさまのこういう淡々とした文章で語られる、ものすごく残酷なくらいに生々しい感情って、なんかこう、どーんってきます。
 続き、楽しみに待ってますね!

じんじゃーさま

いつもありがとうございます!
お返事遅れてすみません。。

生々しいですか・・・どきっ!(笑)
魅録って真っ直ぐな人だから、多分、こういう女の感情ってワカンナイと思うんですよね。
野梨子は本当に魅録が大好きだからこそ、家族との時間を大切にして欲しいと願っている。
魅録も・・・だけれど、融通が利かないって言うか。
分かり合えないトコロです。。
ただただ、お互いを想っていたんですが、ね。

そろそろラストへと向かっているのですが、あと少し掛かっちゃいそうです。

ありがとうございます!

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