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charm anthology

こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。

2011/09/18

outsider 7 (改稿編)

数日前に「更新日記」の過去ログを見ていたら、
ちょうど1年前、短い期間でリンクを外した作品があったんですね。。
携帯電話機能の記載に誤りがあった為、でした。


せっかく見つけたので、ちょっと改稿してアップします。
最近の作品は、携帯電話絡みが多いですし(笑)。


再アップですし、どちらかと言うと「ボツネタ」っぽいです。
それでもよい方は、タイトルクリックでお入り下さいませ。










部室に入ると、いつもは新聞を読んでいるはずの生徒会長の席で、
物憂いな面持ちの美童が携帯電話を操作していた。


「あれ、みんなは?」


テーブルに鞄を放り投げて悠理が言う。


「さあ、ね?」
「どうしちゃったの?元気ないみたい。本日のデート、キャンセル?」
「ううん。違うよ。今さ、誰にしようかって」
「ふうん」


それでもいつもの表情とは違う彼の後ろに回り、彼女は携帯電話を覗き込む。


「なんで?同時に三人を誘うの?」


三名のアドレスを設定し、各々少しずつニュアンスを変えて文章を入力する彼に、眉を顰める。


「違うよ、悠理。この中から、たった一人。今の僕の心を満たす返事をくれる子にするんだ」
「同じような内容を送るなんて、ヤラシイな」


恋愛には潔癖な彼女らしい言葉。


「そうだね、でも・・・」


美童は静かに携帯電話を閉じると、頬杖を付いて目を閉じる。
普段とは違う彼の表情に、でも、暫し見蕩れる。


滑らかな肌、人形のように長い睫毛、艶やかな唇。
悠理は、思わず触れそうになる手を胸元に引き寄せた。
それと同時に、美童がゆっくりと目を開く。
刹那、メール受信を知らせるベルが小さく鳴り響いた。


「見てご覧、悠理。三人の女の子の、それぞれの反応を」


同じ内容で反応を楽しんでいるのかと、やはり眉間に皺を寄せる。


ほら、一人目だよ。


彼は一瞬で送られた内容に目を通すと、そのまま悠理に画面を見せる。

 
「いいの、かよ」


ちょっと罪悪感を感じながら、彼女は顔を近付ける。

 

・・・美童、どうしたの?あなたのメール、ちょっと辛いわ。
波立ってるみたい。

 

人妻なんだ、と彼は呟く。
意味を聞くように、彼の目を見つめる。
でも、すぐに別のメールが届く。


「開いていいよ」


彼は携帯電話を悠理に渡す。
そうしなければ、何だか彼を傷付けてしまいそうで、彼女は受信メールを開く。

 

・・・何時に何処へ行けばいいの?

 

皮肉ったように微笑む彼は、見なくても内容を把握しているよう。


そして、最後のメールが届く。
彼女はもう見る気にはなれずに、携帯電話をそのまま彼に返した。
悲しい瞳で最後のメールを読み終えると、その視線のまま、悠理を見上げる。


「今日は、二番目のメールの相手にするよ」


悠理の為に、コーヒーを淹れていってあげる。


美童は席を立ち、簡易給湯室の中へと消えた。
彼の携帯電話はそのままテーブルの上に、無造作に置いてある。
そっと携帯電話を手にする。
受信メールが開いたままだ。
彼女は一瞬、給湯室へと視線を走らせ、メールを読む。

 

・・・恋愛を継続させたいなら、テクニックが必要よ、美童。
みんなに与えてしまうなら、それが私に分かったなら、
同時に恋愛ごっこは終わるの。


さよなら、愛していたわ。本当よ。

 

「けっこう、本気だったんだ」


突然後ろから声をかけられて、悠理は飛び上がる。
鼻先に立ち篭るコーヒーの香りが、彼女を苦しめた。


「でも、他の二人と違って、僕の思うようにはならない人だった」


だから、見せしめの為に、他の二人と付き合ったんだ。
いつかこうなると分かってた、けれど・・・


「他の二人が、かわいそう。意味がないじゃないか」


そうだね・・・悠理の言う通りだ。
でもね、時には駆引きも必要なんだ、恋愛には、ね。


「犠牲?」
「あるいは、そうかも知れない」

 

美童は悠理の華奢な肩に手を触れると、部室を出て行った。


だから恋愛なんてしたくない。
こんな面倒なら、テスト勉強の方が簡単かも知れない、と彼女は思う。

すれ違うように、彼女の親友が入ってくる。


「よっ!悠理。待たせたな」


物憂げな美童とは正反対に、彼は陽気だ。
今から親友とツーリング。


テーブルの上に放り出された彼女の鞄を取り、もう片方の手で急かすように彼女の腕を取る。


「さ、行こうぜ」


そのテーブルには、まだ白い湯気が立ったままのコーヒーカップ。
よく見ると、それは幼馴染のもの。


「おや、もう行っちゃうんですか?」


当人が入ってくる。


「今からツーリングなんだ。悪いな、清四郎」


彼はちょっと首を傾げる。


「悠理は、魅録と一緒に?」
「う、うん」


意味深長な視線を、悠理は避ける。


「じゃあな、清四郎」


魅録の腕は悠理の肩に回る。


見せしめ?駆引き?
あるいは、そうかも知れない。


彼女は思う。


誰に対して?
犠牲になるのは、どっち?


だって、ちっとも思うようにならないじゃないか!


”いつかこうなると分かってた、けれど・・・”


美童の言葉を思い出す。


胸の痛みを覚えながら、魅録の力が入った腕に頬を寄せて部室を振り向く。

 

そこには・・・ドアに凭れて自分を見つめる、想い人の姿があった。

 

 

 

拍手[16回]

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コメント

1. 胸が・・・っ・・・!

 きゅーってなります!悠理たんてばもう!
 揺れちゃってますよね・・・・!魅録も清四郎も悠理も揺れちゃってる感じがたまらんです。
 言えないのか言わないのか、このぎりぎりのバランス感覚・・・・いつ見てもお見事です!
 kotanさまのところできゅーを補充しつつ、自分のところでバカ全開な話を書くというパターンが自分の中で定着しつつあるのは・・・・・・・ここだけの秘密ですよ!
 これからも素敵なきゅーをお願いします!

 ところで台風、だいじょうぶでしたか?

じんじゃーさま

心遣いありがとうございます!
台風、こちらは雨風ともに強かったのですが、被害はありませんでした。
じんじゃーさまのお住まいの方が大変だったのではないですか?
今年に入って自然災害が多く、精神的に参ってしまいます・・・
作品をいつも読んでいただいてありがとうございます。
三人とも意識してますね~♪
言葉一つで、三人の関係ははっきりしそうですが。
こういうの、好きなんです♪
えっ!ここだけの秘密!?
コメント公開しても良いですよね?(笑)
いつもありがとうございます!

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