こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。
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音を立てるように雨が降り始める。
目の前の樹の枝々を大きく揺らし、アスファルトに滴の跡が幾つも残された。
夏の雨の激しさとは違う、力強い秋の雨。
その強さは、夏のそれと違って温かく感じるのは何故だろう。
ああ、それは・・・彼女は思う。
この季節が、あの人との思い出で一番濃密だったからに違いない。
野梨子、二人の約束を忘れないでいような。
これからは清四郎じゃなくて、俺が野梨子を守るんだから。
魅録と知り合って四年目の秋に、想いが通じ合った。
放課後の生徒会室で、野梨子にそう言ったのだ。
窓辺に佇む彼女の傍らで、そう・・・
開け放された窓の向こう側には、先程までの強い雨が嘘のような優しい色の空が広がっていた。
何があっても、何があってもだよ。
一番に俺に知らせるんだ。
彼女はただ両手を握り締め、何度も何度も頷いた。
あの人の向こう側にも、同じような雨上がりの空が広がっていた。
とっても優しい色の、青。
あの優しい日々から、どの位の時間が流れてしまったのだろう。
魅録との日々、そして忘れ難い記憶からどの位の時間が経ったのか、野梨子にはもう分からなかった。
けれどあの人が過去の人なのだと思い込むには、余りにも鮮やかな記憶があり過ぎた。
出来る事なら自分が過去の人間として、あの人と共に関わった全ての記憶を消してしまいたかった。
記憶を消す・・・それは『戻れる』奇跡と同じ位、不可能な事だった。
通りの向こうの懐かしい”その人”は、まるで待ち合わせたように片手をあげて彼女に近付いた。
「久しぶり」
元気そうで、良かった。
彼はそう言って悪戯っ子のように微笑んだ。
その微笑みは、数年前のやんちゃだった頃と変わらないように野梨子には思えた。
すぐに魅録に連絡を取って会わせたかった。
ちょうどあの人も、外泊許可を取って帰って来ているのだから。
「いや、魅録には黙っていて。
俺、あんたに偶然会えたらって思って、上京したんだから」
近くの喫茶店に入り、二人は時間を忘れて共通の思い出を懐かしんだ。
でも野梨子にとって彼は、”甘く切ない”過去の人に過ぎなかった。
初めて異性として心が揺れ、肌を触れた人に違いないけれど、
今の魅録と自分が抱く深い愛に勝るものは無いからだ。
魅録の近況を伝え、どうしても会わせたいと願ったが、
彼の口からは何度もこの言葉が返っただけだった。
「こっちに戻らないってあいつに言ってあるからさ。
お願いだから今日の事は、内緒にしていてよ」
秘め事を隠し通すのは難しい。
事に、大切な人に対しては・・・
彼を知る裏の世界は、彼を忘れる事は無かった。
だからここ数日の間で、彼の上京を知る人はけっして少なくは無かった。
通りを二人で歩いている時はもう、逃げ場を失っていた。
野梨子は直ぐに魅録へ連絡をと思ったが、彼の言葉と内緒で過ごした先程までの時間、
何より、久しぶりに家族と過ごしているあの人の事を思うと、
彼女の携帯電話を操作する指は別の男の番号を押していた。
清四郎だから、大丈夫。
幼い頃からのその信頼は、深く魅録を傷付ける事を忘れていたのだ。
人で賑わう通りの騒然さを、誰が隠し通せるのだろう。
この事件を魅録が知るのは、その数時間後だった。
1. 真相が…
二人の別離の真相が、少しずつ明らかになってきましたね。
“懐かしい人”の正体も解りました♪
野梨子が魅録を想ってやった事が、逆に真直ぐで潔癖な魅録を失望させる原因になってしまったようですね。
また清四郎が関わったことで、更に魅録の失望を深める事になってしまうのでしょうか…。
野梨子の時間は魅録と過ごした日々で止まったままですね。
野梨子に幸福な“kiseki”が起きる事を願うばかりです。
聖羅さま
作品をじっくり読んでいただいて、本当に恐縮です。
野梨子はただただ、魅録だけを想い、
魅録との時間に留まったままです。
けれど・・・魅録には理解出来ないんですね・・・
”懐かしい人”、分かりました?(笑)良かった!
この方もまた、魅録に似ていて・・・初恋の人でもあって。
微妙な感じなんですね。。
ラスト、まだ私自身決められないでおります。
もう少しお待ち下さいね。
いつも本当にありがとうございます!