こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。
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窓の外を見ると、雨が静かに降り始めていた。
強化硝子を流れる雨の滴に沿って目線を下げると、
街灯に照らされたアスファルトが暗闇に融け出しているように見える。
ゆっくりと広がるそれは、まるで自分達にまで伸びて飲み込んでしまいそうだ。
今一番会いたくない男だけれど、一番頼りになる男。
目の前で、可憐の視線を追うように窓の外を見ている。
「物凄い、出で立ちですね」
腕の中に倒れこんだ可憐を抱かかえて言う。
突如として現れた親友に安心したのか、彼女は清四郎の胸に飛び込んで声を上げて泣き出した。
普段は冷酷な男として通しているはずなのに、こんな時の彼は温かいと言う事も長い付き合いで知っているのだ。
大切な仲間を放っておく訳が無い事を。
けれど、彼女の理由は許される事ではないと、自身こそがよく判っていたから!
だから避けていた。
もう全てを投げ出して、この男に頼り、叱られてしまえば良い。
何度も言葉を詰まらせながら彼との出会いから昨日までの事を話している内に、
時間は真夜中を充分に過ぎてしまっていた。
何杯目かのコーヒーもすっかり飲み厭きて、カップが空になる前に、その黒い液体は油を含むように濁り始めた。
閑散とするファミリーレストランは、何処からか冷やりとする空気を運んで来る。
「そう、ですか・・・今一つ、しっくり来ませんね」
叱るどころか、疑問に思った事以外口を挟まぬ清四郎が、話し終えた彼女に言った言葉がそうだった。
「可憐の想いは伝わりましたが、あなたへの想いが伝わらない。
これから、どうするつもりですか?」
「ん・・・もう、終わりにするわ」
「その方が、良いですね。どんなに可憐が想っても、相手には家族がいますし。
彼は、家族と別れてあなたと一緒になるって言ってないんでしょ?
言い方が悪いけれど、都合良過ぎです。
可憐も、もっと自分を大切にしないと」
「分かってる・・・」
何時に無くしおらしい彼女を見て清四郎は、自分の心が痛むのを感じた。
彼は視線が合うとちょっとだけ微笑を向け、大切な仲間の出来事を伝える。
悠理がね、昨日、バスケ部の助っ人で練習試合に出たんですよ。
それで、珍しく負けちゃってね。
もう、こんな試合出るかーっ!て言って投げ出すと思ったら、
これまた珍しく、試合後に練習に向かったんです。
余程悔しかったんでしょうかね・・・
それとも、僕達が最後の最後まで目一杯応援した、その気持ちが伝わったのかも知れませんね。
ビルとビルの間から、柔らかな朝の陽が射し込んで来る。
何時の間にか、暗闇は去っていた。
「ねぇ、可憐」
俯いて手元ばかりを見つめている彼女に、清四郎は諭すように話し続ける。
白黒付く問題や次の目標が出来る負けは気持ちを整理しやすいけれど、
恋愛はそうもいかないようですね。
勝ち負けの問題じゃ無いのは分かってますけど。
負けた想いが自分をパワーアップしてくれるようになるまで、
上手に付き合って行くしかないのかも知れません。
完全な朝が、ファミリーレストランから出た二人を迎える。
まるで初夏を思わせるような陽射しが、眩しい程通りを照らしていた。
清四郎はふと思う。
可憐は、男を通して何を求めていたのだろう。
恋に生きる女と強く断言する彼女だけど、それについては真面目な事を知っている。
ひょっとして彼女は誰かの代わりに?
美童?魅録?
まさか、僕じゃあ、ないですよね?
突き詰めれば、今回の彼女の理由が解るのかも知れないけれど。
今の彼女には、もう、余計な事なのだ。
清四郎は縮こまった身体を伸ばすように空を仰ぐ。
まだ汚れていない空気を思い切り吸い込んだ。
「可憐、見てごらん」
「え?」
全てを赦すような優しい表情で上を見ている彼の視線の先を追う。
気持ちが良いくらいの青。
気持ちが良いくらい透き通って。
まるで可憐の重苦しかった心にまで浸透しそう。
可憐、大丈夫ですよ。
空は、こんなにも良い天気なんですから。
1. 感動しました
kotan様の新作を楽しみに待っています。
聖羅さま
原作の可憐ではこんな恋は有り得ないけれど、
でも、もしこういう恋をするのなら彼女かなって思い、描いてみました。
また、慰め役は美童のような気がしましたが、敢えて清四郎に。
清四郎は恋に不器用だけれど、代わりの恋でまた乗り越えるのではなく
”辛い恋の終わりだけれどいつかきっと乗り越えられるから、
それまでは上手に付き合いながら生きて行かなくてはいけないんだよ”
と言う意味を込めて。
向き合うには辛すぎる、けれど、それが現実。
それが・・・赦されない恋の報いなのだと・・・そこは厳しく(笑)。
感想をとても嬉しく思います。
また遊びに来て下さいね!