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XPがネット使用できなくなり、ウィンドウズ7はシステムアップデートができず入院中。
すっかり執筆意欲がなくなってしまうほどしょげてますが・・・
ボツネタへの拍手をいただけて♪とっても幸せ~♪
ですので、ちょっとだけ続きの小ネタをアップしいたいと思います。
え~、しばらくは7インチのタブレットからの投稿になります。
中年には辛い作業で、誤字脱字やストーリーの辻褄が合わない等、
ご迷惑をかけると思いますが、どうぞお許し下さい。。
会館のエントランスを抜けてタクシープールに向かう。
でもタクシーは一台も止まってはいない。
まぁ、そうだろう。
今日は会館で、特別な催し物はない。あるのは、企業の会議や何かの説明会。
タクシーを使うほどではないのかも。
あたしは迎えを頼もうと、でも、目の前の庭園をちょっとだけ散歩してみたいと思う。
昼下がりの晴天を建物と乗り物だけに留まるのでは味気ない。
ランチはまだだったけれど、少しだけ穏やかな空気に触れていたい。
あたしはゆっくり手入れの行き届いた庭園を歩きだす。
風がほとんどない午後で、初夏を思わせる。
緑の草木の中に赤や黄色の花があって、綺麗。
植物に詳しいのなら、もっといろんな表現や楽しみ方があったのだろうけれども。
見渡すと空も緑も、まるで洗われたように澄んでいる。
普段はただ通り過ぎるだけの風景だった。
会館での会議は頻繁だけど、こうして庭園を歩くことなんてないのだから。
いつもの風景。でもいつもと違う。
いつもと、感じ方が違う。あるいは、そう。
昨夜、清四郎が突然来た。
部屋に来たのは、高等部の卒業以来かも知れない。
卒業間近にあたしを振って、何度か仲間内で会う機会はあったかも知れなかったけれど、まともに話した記憶なんてないんだから仕方ない。
あたしが清四郎の彼女として足りなかったから振られたとずっと思っていた。
デートの帰り際に突然、“友達でいよう”って言われたからその方が自分達の為にいいのだろうと、清四郎が言っているのだからそれが正しいのだろうと、理由を訊ねるくらいでもないのかなって考えるようにした。
本当は理由を訊きたかったんだ。
あたしが悪いんなら(だいたいは原因があたしにあるから)、懸命に直す努力をしたかったし、もし仮に清四郎に原因があるなら、受け入れることだってできたかも知れない。
でも、何も言ってくれなかったし、訊ける雰囲気でもなかったよ。
だから、離れた方がいいのかなって。
でも“友達”には戻れないって、あたしは思った。
それにそれが、清四郎の口実だってのも分かっていたのかも知れない。今となっては。
風がそよっと吹いた。
心地好い、夏のような風。
清四郎はあたしを、留まらない風に例えたけど、あたしはいつも清四郎の傍にいたかったよ。
悪戯に手を伸ばしたのなら、あたしはその手を握り締めたかった。
吹き抜けたんじゃなくて、留まり方を知らなかったのかも知れない。
あるいは、清四郎の手の伸ばし方が足りなかったんじゃない?
どうやってここまで乗り越えて来たか覚えていない。
涙を見せないように強がってたけど、強くなりたいって願ってたけど。
強くなれていたのな。
目の前の風景に気付きもしないで、ただ通り過ぎて来たのかも知れない。
ううん。見るもの全てが、清四郎との思い出に重なって、あたしは見ないようにして来たんだと思う。
通り過ぎて来た同じ風景が、ちょっと立ち止まって見ると、こんなにも新鮮でどこか懐かしくて。
あたしはもう独りではないって言う事実が、こんなにも心を温かくさせる。
手を伸ばしたら、届く距離に清四郎はいて。
朝まで、清四郎と一緒にいた。
清四郎との初めてのキスも、初めての交わりも、一度に来ちゃったから正直混乱してる。
体の痛みもまだ全然取れてなくて。
けどその痛みが、清四郎との現実を表しているようで嬉しい。
ひとりぼっちじゃないっていう、現実。
あたし達はもう絶対に、離ればなれになることはない。
そう約束したんだから、そうでしょう?
そうだよね。
ね、清四郎。