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charm anthology

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2025/02/01

あしたのむこう 2

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2014/01/18

あしたのむこう 2

ご訪問ありがとうございます。
いただいた拍手、とても嬉しいです!

今回の内容は、状況説明が主です。




*この作品はメンタルヘルス的な要素や現実とは違う症状を描いております。
また年齢制限がある(若い方には不適当な)文章も含んでおります。
その為、このような文章をご理解いただける方のみご覧下さい。
十代のお若い方やメンタルヘルス的・年齢制限を感じさせる表現を好まれない方はご遠慮下さい。
読後の苦情も受けません。














土曜日の朝に魅録からもう一度メールで悠理の見舞いに誘われたが、断った。
まだ心の準備ができていないし、今僕が悠理に会ったら、病状は悪化すると思ったからだ。
彼女は・・・僕との間で起こった事が原因で病気になったのは明らか。
そう、確かにあの日以来、彼女の様子は目に見えるように変化したのだ。
クラスではいつも考え込むように塞ぎがちで、食欲が激減した。
放課後の生徒会室には寄らずに、休日は連絡が取れない。
まさかとは思っていたが、ここまで酷くなるとは正直考えてもみなかった。
学校を欠席するようになってから、何度かメールや電話をしたが返信等はなかった。
仲間達と自宅へ訪問もしたのだが、体調が悪いと言う理由で取り合ってももらえずにいた。
あの日の事は・・・忘れようとしていた。
彼女の興味本位と知っていたし、その対象が僕である事に腹も立っていた。
目的を果たしたら後腐れがないと言うのが互いの不文律であるはずだった。
それなのに、だ。
何故彼女は厄介な問題を投げかけるのだろう・・・

夕方になってまた魅録から連絡が入った。
今度は電話で、悠理の症状や病院の様子を知らせてくれた。
少なからず魅録もショックを受けていた。
元気だけが取り柄の悠理の変化が辛かったのだろう。
特に魅録にとっては、悠理は微妙な位置を示していたのだろうから。



*** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** ***



魅録が病院に着いた時、時計は午前十一時を少し過ぎていた。
陽射しが強い土曜日で、郊外のそこはまるで休日を過ごしに来たように感じた。
サナトリウムをイメージするが、診察がある為、外来患者の出入りが見られた。
彼は受付で悠理の名前と自分との関係を伝え、病室での面会を希望した。
五分位近くの椅子に座って待たされたが、その後はすぐに病室まで中年の女性看護師に案内された。


「剣菱さんの症状は、それほど酷くはないんですよ。院長先生が毎日カウンセリングを行っておりますから。
ただ、精神的なショックが強かったのでしょうか・・・なかなか声が出ないようなんです。
でも食欲も戻ってきていますし、時々自分から近くの温室まで散歩に出かけたりしています。
施設内にある図書室や食堂で時間を過ごしたりもしています」


病院の奥には入院病棟があり、長い廊下を歩かされた。
けれど悠理の症状は何度も言うようにそれほど重くはない為、別棟にある施設へと移動した。


「次にお見舞いにいらした時は、直接こちらの施設にいらしてもよろしいです。
施設の入り口にはやはり受付の者がおりますので、そこで面会を希望する事を伝えて下さい。
その日の症状によって、もしかしたら面会室へ行くように指示されるかも知れません」


分かりました、と魅録は先を歩く看護師の背中に言う。
彼女は受付で悠理への面会を告げた。
受付の女性事務員はまだ若く、魅録を小さな窓ガラス越しに見て恥らうように微笑み、軽く会釈をした。


「こちらの施設は入院病棟と言う感じではないでしょ?剣菱さんのように症状の軽い患者さんが入院されてますが、
病室も少なく、患者さんももちろん少ないです。
主に病院関係者が利用していると言っても良いんですよ。院長室も私達看護師のロッカールームもあります。
さっきも言いましたように、食堂や図書室と言った場所もありますしね。
付き添いの方の部屋もご用意してあります」


悠理の部屋は三階にあった。
エレベーターを出るとすぐに広いホールと奥にテレビや新聞等の視聴室があり、簡単なソファセットもある。
ここでの面会も可能なのだろう。自動販売機もあった。
窓もサンルームのように開放されていてとても明るい。
看護師はその場所で立ち止まり、魅録を振り返った。


「すぐそこが剣菱さんの個室です。今は在室のようですので私から入室します。
ちょっとここで待っていてもらえますか?家族以外の面会は、松竹梅さんが初めてですから」
「はい」
「もしかしたら、拒まれるかも知れません」
「分かりました。構いません」


彼女が入室し、数分で部屋を出て来た。


「ベッドで休まれていたんですが、今着替えてます。体調も落ち着いていますよ。
もちろん声はまだですし、後、表情が・・・お会いになれば分かりますが・・・」
「承知しました」
「さあどうぞ、お入り下さい。帰る時はさっきの受付に、もう一度声をおかけ下さい」
「いろいろありがとうございます」


魅録は礼を言い、看護師は診察室のある病棟へ戻った。

開け放されたドアを、彼は二度ノックする。
悠理、と名前を呼び、病室へと入った。
十畳ほどのスペースにベッドと簡易的なクローゼット、洗面所とシャワールームがある。
テレビは使われた様子はなく、それが余計に静けさを感じさせた。
彼女は、正面の窓際の椅子に座っていた。
陽射しを背に、焦点が合わないような目で魅録を見つめている。


「よお、元気か?」


彼女へと歩み寄るが、顔には表情と呼べるものがなかった。
襟のない白のブラウスにクリーム色のスカート。それはよく見ると、スウェットのような生地でできている。
入院患者用に作られているのかも知れない。


「悠理・・・」


彼はもう一度名前を呼ぶが表情に変化はなく、自分を見つめていたはずの視線は逸らされ、窓の外を見ている。
何度名前を呼んでも、話題を持ちかけても、悠理は動く事はなかった。
彼女に触れようと手を伸ばしかけたが、まるで見えない壁があるようにそれ以上は動かなかった。



*** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** ***



「清四郎の言う通りだったかも知れない」


魅録は言う。


「今俺達が訪ねても、状況は悪化するようさ」
「状況?」
「ああ。多分体に異常はないんだろうけど。俺達が行く事で、余計に殻に閉じ篭る」
「ええ」
「清四郎は行けないのか?やっぱり」
「・・・・・」
「清四郎なら、悠理の状況を変えられないだろうか?」


それはできない、と僕は思う。
誰よりも、彼女は硬い殻を作ってしまうだろう。


「退院の見込みはないんですか?」
「今のところは」
「そう、ですか」


しばらく、魅録は沈黙する。
電話の向こうには、深い闇に飲み込まれたような静けさと哀しさがある。


「俺では、悠理を救えないかも知れない。清四郎」


僕は・・・僕では・・・

でも、何故?
知りたいと言ったのは悠理だ。
相手は魅録でも美童でもなく、僕を選んだ。
彼女の病気の原因が、例え僕であったとしても。


「分かりました。近い内に行ってみます」
「サンキュー」


安堵したような気配が窺える。
電話の後、僕は鞄から手帳を取り出した。





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