こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。
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彼女は先程から背中を僕に向けて独り言を発している。
十五分くらい前に目覚め、びっくりするように飛び起き、それからブランケットを羽織ってベッドの上に座り込んでいるのだ。
「やばい。やばいよ・・・」
「だから、何かやばいんです?」
僕は彼女の背中に話しかける。
ピクッと肩を上げて、チラリと僕を振り向いた。
けれど僕の上半身裸の姿に怯え、ガタガタ体を震わせて前を見る。
「さっきから。やばい理由は何ですか?僕と悠理はこんな関係になってはいけないんですか?」
苦しそうに呼吸する姿に、いい加減苛立ちも覚える。
昨夜・・・正確に言えば今日の午前二時過ぎ、僕と悠理はかなり酔ってこのホテルに入った。
大学に入ってメンバーそれぞれが忙しい日々を送っていたが、久しぶりに会って飲み会を開いたのだ。
最初に野梨子と可憐が潰れ、二人を美童がタクシーで送って行った。
三人で飲んでいたのも束の間、魅録が別の旧友と遇い、途中で別れた。
結局悠理と閉店近くまで飲んでいたのだが・・・
酒に強い僕達が珍しく酩酊し、微かな記憶の中タクシーに乗り込みこのホテルに入った(ようだった)。
「ん~、う~ん。だって、怒られるよ」
「誰に?」
「誰って!野梨子とか可憐とかさ!」
そう言ってまた振り向き、同じように怯える。
「ねえ悠理。どうしてそう思うの?僕達二十歳も過ぎた成人でしょ?
お酒だって飲めるし、行動には責任が持てる年齢じゃあないですか?違う?」
「・・・・・」
「メンバー同士でこういう関係になってはいけないって、誰が決めたの?」
「だって、だって!付き合っても好き合ってもいないのに、酔った勢いでこんな・・・」
「今のは語弊がありますね。僕は悠理が好きですよ」
「!!!」
「悠理は?」
「そ、そりゃあ、好きだよ。友達だもん」
「友達・・・ちょっと胸がチクリとしますね」
「だからさー。友達同士でこんなコトになっちゃあ、やばいだろー」
ふ~ん。こういう事に関しては、僕以上の常識を持っていた訳だ。
「酔った勢いにしても、互いの同意があったって訳でしょ。
別に誰にも悪い事していないし、傷付きもしない。これを機会に関係を深めたって異論なんてない」
どうだ。そうだろう。
「それに。全然嫌がってなかったじゃないですか」
「え?」
恐る恐る振り向いた彼女に、僕は勝ち誇ったような笑顔を見せる。
「喜んでましたよ。むしろ」
「・・・・・」
かなり調子を崩した彼女に、更なる一撃を加えた。
「あれ、悠理って、初めてですよね?」
「へ?なんのコト?」
「だから、さっきまでの、二人の行為」
「ぐっ!」
真っ赤になった顔を逸らし、がっくり肩を落とす。
「さ、さあね。内緒」
「ふうん。今までのお前の行動を見れば、初めてのはず。でも・・・」
「な、なに?」
「いやあ、難なく事が終わったような気が。ま、かなり酔ってましたからぇ」
「清四郎のサイズに問題があったんじゃない?」
「なにっ!!!」
ありえない!悠理が僕にこんな事を言うなんて!!
思わず狼狽えた僕を見て、彼女はブランケットを羽織ったまま立ち上がった。
「あたしだっていつまでも子供じゃないもんね!」
「へえ。じゃあ、最初の人は誰ですか?」
「お・し・え・な・い・!」
「魅録?まさかの美童?」
「さあね。ちょっとシャワー浴びてくる」
彼女は翻り、シャワールームに消えて行った。
僕は気持ちを落ち着かせ、昨夜(正確に言えば明け方まで)の出来事を呼び起こす。
もう一枚のブランケットを綺麗にたたみ込み、シーツの皺を伸ばす。
「ふうん。やっぱり」
僕は彼女を、シャワールームまで迎えに行く。
ちょうどシャワーを浴びたばかりの彼女に出会った。
「わっ!びっくり!」
さり気なく、バスタオルを渡す。
「おやおや。今更驚かなくても。シャワー、痛くなかった?」
「うっ!」
「ちゃ~んと証拠を見つけたんだから。白状しなさい」
「ナンだよ。さっきから」
「僕が初めてだって言え」
無視してベッドルームに戻った彼女は、整ったベッドのシーツに残る証拠を見つけて固まった。
「こんな事までしなくたって・・・」
そう呟く彼女の顔を後ろから覗き込み、はっとする。
悠理は・・・ポロポロと大粒の涙を流していた。
「すまない。僕がデリカシーに欠けていた」
そうだ。女の子にとって初めての経験は、デリケートな問題なのだ。
特に悠理のような女の子は。言動と胸中は全く違う。
それなのに、僕は。
「悪かった」
「ん、大丈夫。もう気にしてない」
「悠理の最初の人は、僕であって欲しいって、そう思って」
素直な、僕の気持ちを伝える。
けれど力なくベッドに座り込む姿が痛々しく、黙ってシャワーを浴びに部屋を出た。
既成事実を作ったところで、彼女の気持ちはどうなのだろう。
僕が一方的に進めてしまっても。
彼女の気持ちを一番に考えてあげないと。
シャワーから戻ると彼女は既に着替え、普段の笑顔を僕に向けた。
「清四郎、おなか空いた」
「はいはい。ルームサービス?それとも外で?」
「さっきここのメニュー見たけど、大した事ない。外に行く」
「分かった。ちょっと待ってて。着替えるから」
せめてもの思いで急いで着替えた。
鏡の前で襟元を整えていると、鏡の向こう側に悠理が映る。
「清四郎が、初めて。そうであって欲しいって、ずっと思ってた」
突然そんな事を話しかけられ、僕は慌てて振り向く。
このタイミング?時機を見てもう一度って思い直してたのに。
「清四郎は・・・ん、聞かない。聞いたって変わんないもんね。
そこに気持ちがあるんなら、いいんだ」
「あ、ありがとう」
もちろん聞かれても、困る。
けれど、想い合っていたなんてこの上ない。
「悠理。食事はもうちょっと後でもいい?」
「え、なんで?」
「チェックアウトまでまだ一時間もあるんですよ」
「うん。だから?」
彼女に近付き、今までにないほどの優しさで抱き締めてベッドに倒れこむ。
「ちょ、ちょっと!おなかがかなり減ってるんだぞ」
「まずはこっちで満たしましょ」
僕は彼女の抗議の声が上がらぬよう、その唇にキスをした。