こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。
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窓もドアも全開の生徒会室。
室内が籠もるように暑く、綿埃がちょっと気になるところだが、こうせずにはいられない放課後だ。
「はい♪悠理、お待たせ~。氷とシロップたっぷりのアイスティよ」
「わぁ。可憐ありがと!」
「おやつのクッキーもあげるからね」
「うんうん!」
すっかり飼い馴らされた悠理は、可憐にシッポを振っているようだ。
「あ、僕もおやつがあるよ。さっき差し入れにもらったんだ。
ケーキだけど食べる?」
「美童~、愛してる♪」
美童も、然り。
「悠理。先週のテスト結果、まあまあだったじゃないですか。でかした!」
「まーねー。やる気になればできるのさ!」
「教え方が良いんですよ、僕の」
「あー、そうとも言うかな~」
「さ、次も気合入れてやりましょう!!」
清四郎は悠理の華奢な背中を、ビタビタ叩いたりなんかしている。
和気藹々って感じで。
「あら。私の事を“役得”だとか“特権”とか言っていた悠理が。
悠理こそそうだと思いません?魅録」
「へ?」
ソファの上で寝そべりながらメンバーの様子を見ていた俺の横に、突然野梨子がやって来た。
「まあ、そうだよな」
「ほら。清四郎なんて嬉しそうに次のテスト勉強の予定を立ててますわ。勝手に。
どちらが役得なのか特権なのか分かりませんわねぇ、全く。ほほほ」
どことなく冷ややかさを感じる笑い声に、こめかみが痛む。
空気を読めない清四郎が、こちらを振り向いて野梨子に話しかけた。
「そろそろ帰りましょうか、野梨子。行きたい書店があると言ってたでしょ?」
「良いんですのよ、もう」
「おや、どうかしましたか?」
野梨子は俺の腕を掴み立ち上がる。
俺は寝そべっていた為に、ソファからズリ落ちてしまった。
「いてっ!」
「大丈夫か?魅録」
悠理が心配そうに近付いた。
「魅録は大丈夫ですわ。それに今から私、魅録と一緒に帰りますの」
「え?」
「そうなの?魅録、あたしとハンバーガーは?」
「清四郎、悠理をお願いしますわね」
呆気に取られていると、野梨子は俺の鞄と自分のを持ってさっさと生徒会室のドアへと向かう。
「魅録、早く帰りましょ。遅くなりますわよ」
「え?あ、はい」
俺は急いで野梨子を追う。
勢い余って開け放されていたドアを閉めてしまった。
窓を開けていた所為もあって、バタンと言う音が響いた。
「待てよ。野梨子、いいのか?」
「何がですの?」
「清四郎だよ。予定があったんだろ?」
「別に。良いんですのよ」
理由は分からない。
彼女は、昇降口を出るまで何も話さなかった。
夕方の陽射しは思ったよりも強く、あっと言う間に背中に汗が流れる。
野梨子はと言えば、顔色一つ変わらず、表情もなかった。
「怒ってるの?」
「まあ。どうしてですの?」
「いや」
俺は言葉を濁す。
「魅録は・・・」
野梨子は途中立ち止まり、俺を見上げる。
「魅録は、悠理をどう思ってますの?」
「え?悠理?」
ええ、と言って俯く。
何が何だか分からない。悠理?どう思ってるって?
野梨子は、何が言いたいのだろう。
「さっきの事?野梨子の機嫌が悪いのは、清四郎が悠理とばかり話してるからかと思ったけど」
「違いますわ」
ねえ、ちょっとお茶を飲みませんこと?と言い、俺が返事をする前に近くの喫茶店に入った。
エアコンディショナーが強く、汗は一気に引いていく。
窓際の席に着くと、野梨子も細い腕を摩った。
「大丈夫、寒いか?」
「いいえ。大丈夫ですわ」
ホットコーヒーとアイスコーヒーを注文すると、俺は店のスタッフに、エアコンディショナーを弱めるように伝えた。
「ありがとう、魅録」
「いや。で、さっきの話。何であんな事訊くの?」
彼女は思い詰めるように眉間に皺を寄せる。
そんな姿は、清四郎によく似ていると思う。
「悠理は大切な親友さ。他のメンバーと同じように」
「ええ。そうですわね。私もですわ」
安心したように俺を見て微笑む。
だから俺も、ホッとする。
「でも・・・清四郎の中では違いますのよ。悠理は、特別ですわ」
野梨子の言葉に、俺は確信を得た。
「知ってたさ。俺だけかと思った」
「良かった!魅録も感じてたのですわね」
「でも、いいのか?野梨子は」
「あら、それを言うなら魅録もでしょ?でも、魅録も私と同じですわね」
そう。親友の幸せを願ってるだけ。
「きっかけを与えただけですわ。清四郎、いつまでもダラダラと」
「あはは。全くだ」
すっかり、いつもの野梨子に戻っている。
「私達は私達で楽しみましょう。でも、私では物足りないかしら」
「そんなコト、あるもんか」
俺に向ける笑顔が、何だか特別に与えられているみたい。
損ばっかなのは、実は俺だと思ってたから。
俺にも、やっと運が向いてきたな!
思わず含み笑い・・・せずにはいられなかった。