こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
早朝のメールが誰なのか、受信音を設定していなくても、そのメールを開かなくても分かってる。
清四郎と悠理が付き合うようになってから、僕の役目ってばいつもこれだ。
ま、魅録じゃ、恋の手解きは無理な話だけどね。
カフェに着くと意外にも、悠理が窓際の席を陣取っていた。
店内は人が疎らで、そのほとんどが徹夜明けのサラリーマンだ。
誰も僕に興味を示さない。
そして彼女はと言うと、失恋しているように思えないほど、大きな口を開けてマフィンを食べている。
僕に気がつくと片手を挙げて微笑んだ。
「おはよ。元気そうじゃん」
「そうでもないよ。マフィンが胸に詰まるもん」
なるほど確かにね。大きな目が腫れている。
僕もマフィンと紅茶を注文する。
でも僕のマフィンは、ソーセージやハムが挿んであるのではなく、カップケーキ。
少食の僕には、これで充分。
彼女は自分の分を食べ終え、僕が食べ終えるのを窓の外を見ながら待つ。
長い睫毛が重たそうに上下に動く。
「忘れる事なんてないんじゃないかな?
今は考えられないのかも知れないけれどさ」
彼女はびっくりしたように振り向く。
もしかしたら、違う言葉を期待していたのかもね。
「どういった経緯なのか分からないけれど、二人で決めちゃったなら、そうさ」
今の二人には、まして悠理には、関係を修復するよりも距離が必要に思えるんだ。
「悠理にとって本当に清四郎が大切と思うなら、頑張った清四郎を休ませてあげようよ」
彼女は僕の期待外れの言葉に失望する。
目が、口元が、何故って風に訴えてる。
「求めるだけが全てじゃないって思うんだ。時には・・・与えてあげなきゃ、ね」
清四郎を休ませている間は辛いかも知れないけれど、時間って言う強い味方が悠理を成長させてくれると思う。
忘れるんじゃなくて、静かな安らいだ時間を与えて清四郎を癒してあげるんだ。
そうしている内に悠理の涙は乾いて、辛い記憶が愛しい想いに変わっていくと思う。
愛しい想いは、いつか清四郎が幸せになる事を願うだろうね。
「簡単な事じゃないけれど、きっとそうさ」
悠理はぼんやりした瞳で僕を見つめる。
「清四郎を、休ませてあげるの・・・」
まだ理解するには苦しいと思うけれど。
「清四郎も悠理の幸せを願って、離れて行ったんだと思う」
互いの幸せを願って・・・
僕に向けた悠理の笑顔は、いつもとは違う大人びたものだった。
ほんのちょっとだけ、分かったのかも知れない。
悠理を見送った後、僕は動き始めた街路を歩く。
今日のデートの相手をリストアップしながら、悠理に言い忘れた事を思い出す。
“清四郎が幸せになる事を心から願える時、幸せにしてあげるのが誰なのか・・・”
その答えも分かるってね。