こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。
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「野梨子、何してるの?」
突然声をかけられて我に返る。
後ろを振り向きもせず、自分が無意識の内に見つめていた物。
握り締めている携帯電話。
その親指が、何度も新着メールの受信を確認していた。
「いいえ、何も。ちょっとぼんやりしていただけですわ」
「そう?気分が悪いんじゃない?
雨に濡れて風邪でもひいてるんじゃないかって清四郎が心配してたよ」
「大丈夫。ちょっと服が濡れただけですもの」
「ならいいよ。ごはんができたから呼びに来たんだ。
カレーだって。清四郎と美童で作ったの」
「まあ、美味しいのかしらね?」
「夏野菜のカレーだってさ。いっぱいあるよ!」
「悠理の為ですわね。すぐに下へ降りますから」
嬉しそうに翻る彼女の後姿を眺める。
さあ自分も着替えて階下へ行こうと心を弾ませ、六人で座るダイニングのテーブルを思い浮かべた瞬間、
今でも大切な(それは自分だけが感じる事ではない)、失われている誰かを思い出す。
魅録!!
まるで心臓が誰かの手で鷲掴みされたように痛み出す。
少しずつ平静を取り戻しつつある日常に、罪の報いを思わせるかのように鮮やかに記憶が甦った。
あの時、可憐の誘いを断って一人で出かけようと思わなかったら。
通りの向こうの懐かしい人に、気付かずにいたら。
魅録との約束を守って、直ぐに連絡を取っていれば。
そう、久しぶりの家族団欒に水を差しては・・・といらぬ遠慮をしなければ。
私達は何も変わらず今を過ごしていたのかも知れない。
後になって色々な事を何回も繰り返し考えたが、その全てが空しい繰り言だった。
あの日・・・土曜日の午後、可憐からウィンドウ・ショッピングでもしないかと誘いの電話があった。
だが金曜日の午後から魅録が外泊の許可をもらって帰って来ていたので、
彼女はいつ連絡があっても都合をつける事が出来るようにと一人で過ごしていたかった。
彼の母親が帰国している事もあって、日曜日の自分との約束以外は家族水入らずで過ごして欲しいと思ってはいたが、
もしかしたら「ちょっとでも会おう」と連絡が来るかも知れないと期待もしていたのだ。
そして、野梨子の想いを試すような事が起こった。
人でごった返す通りの向こう側に、懐かしい人がこちらを見て微笑んでいたから。
以前より顔色が良く、頬がほんの少しふっくらしている事が落ち着いた生活を意味していた。
映画のような再会に、彼女は大切な事を忘れた。
変わらないものなんて、ない。
野梨子は友人達との食事の席でそう思った。
恋愛も友情も、いつかは変わってしまう。
想う事、気遣う事、その行為は変わらなくても、相手は・・・変わってしまうのだから。
楽しそうにはしゃぐ悠理だって、それを見守る清四郎だって、以前とは違っていると理解しているはず。
だから彼女は、懐かしい人を目の前に、全く違った感慨を覚えた。
初めて異性として受け入れたその人への想いが、”甘く切ない”過去の記憶として甦っただけだった。
「野梨子・・・野梨子ってばっ!」
「え?何ですの?」
「またボンヤリしちゃってさぁ」
友人達の笑顔が、彼女の心を和ませた。
何も考えずにこの中に飛び込み、全てを委ねる事が出来たらどんなに良いだろうと思った。
けれど消えない記憶が、彼女をそうはさせなかった。
1. 楽しみに待っていました
ちょっとしたボタンの掛け違えから2人の信頼が崩れていってしまったようですね。
映画のような再会をした“懐かしい人“が誰なのか、
その出会いが2人の関係にどのような作用を及ぼしたのか、
とっても気になります‼
聖羅さま
楽しみにして下さって、とても嬉しいです。
2人の信頼関係。
互いを思っての事と行き違い・・・
過去の淡い想いを、ただ懐かしんだだけ。
けれど、もう一つの行き違いが。
次回までまたちょっと時間をいただきますが、
どうぞお付き合い下さいね♪
ありがとうございます!