こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。
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日中の陽射しで熱くなったアスファルトが、降り始めた雨に叩きつけられる。
まるで音が鳴るように湯気が上がり、一瞬の内に消えた。
雨の匂い。
アスファルトが冷める匂い。
夏の匂い。
野梨子はこんな時、感慨を覚える。
夏の当たり前の光景が、真新しいように思えるからだ。
彼女は近くの商店街を歩いている途中で雨にあった。
友人達は観光地を巡って来ると出掛けて行ったが、
自分は気分が乗らないのと独りで過ごしたいが為にこうして歩いていたのだ。
アーケードがある通りに逃げ、ぼんやりとそんな夏の光景を見つめている。
あの時から・・・何もかも全てが変わってしまった。
そんな事を思い、今は苦笑している自分がいる。
今は・・・そう、”今”は。
雨に濡れ、こうして立っていると言うのに、何故自分は独りでいるのだろう。
何故あの人は、私を雨に濡れない安全な場所へ連れて行ってくれないのだろう・・・
通りを歩く観光客が、何時の間にか何処かに消えてしまった。
こんなに強い雨なのだから、土産店の中にでも入ってしまったのかも知れない。
『長期の休みは必ず会えるのだし、メールをくれれば必ず返信するさ』
『ええ、でも淋しいですわ』
『もう淋しいの?さっき電話で話したばかりだよ!』
何時かのメールのやり取りを思い出す。
一人だけ皆とは違う大学・・・防衛大を選んだ。
全寮制の為今までのように会う事が出来なくなり、
また週末の休みも校友会活動に充てられる事が多かった。
学園生活とは違う季節の始まり。
激しく降り続く雨が時々自分にも降り掛かるのだが、彼女の足は動かなかった。
アーケードから顔を出して真っ直ぐ空を見上げる。
雨はまるで、自分を避けて降っているようで可笑しかった。
雨にまで、嫌われてしまってわね。
笑みを浮かべようにも、上手くいかない。
彼女は片手を空へと掲げた。
手は直ぐに雨に濡れ、腕へと流れる。
『俺はいつも野梨子の掌に、野梨子はいつも俺の胸ポケットにいるよ』
あの人はそう言って、メールでの連絡を毎日する約束をした。
自由時間が少ない中でも、約束を守ろうとする思いが嬉しかった。
彼女は濡れた手を戻し、その掌を見つめる。
『どんなに辛かったか分かる?最後まで野梨子を信じようとした俺の気持ちが理解出来る?
野梨子の悲しみと同じように俺の悲しみだって・・・計り知れないよ』
あなただって・・・
野梨子の心の内がまた熱くなる。
あなただって、私の取った行動を理解しようとしなかったじゃありませんか。
あなたの事を思っての行動が、何故”約束を守らない”の一点張りになるのか、
その事の方が私には理解出来なくてよ・・・
あの時の出来事が苦しさと懐かしさ、愛しさとに混ざって甦る。
同時に携帯電話がメールの受信を伝えた。
今でも受信の度に緊張するのだが、大分落ち着いて来ていた。
ああ、やはり・・・と彼女は携帯電話を手にして思う。
あの人ではない、悠理からだった。
『何処にいるの?
スゴイ雨だし、何回も行った場所だからあきちゃってさ、みんな別荘に戻ったよ!』
野梨子は思わず口元に笑みを零す。
決して独りにしようとしない彼女の心遣いに。
『お土産を見に商店街に出ていたら、私も雨にあいましたわ。
直ぐに戻りますから』
そうメールを送信すると、手に陽射しが届いている事に気付く。
何時の間にか雨は止んでいた。
通りに視線を移すと、黒く濡れたアスファルトに反射する程の強い陽射しがあった。
1. 無題
突然の雨は野梨子の心の闇を表しているかのようですね。「あの人」の心が離れてしまった原因となった「守られなかった約束」とは何なのか。
野梨子の心にはまた陽が射すのか。
次回がとっても楽しみです‼
聖羅さま
夏の雨って以外にも冷たくて、激しい。
”あの時”から続いている野梨子の心の内のよう。
「守られなかった約束」についてどう文章表現しようか悩んでいます。
と言うのも、「え~!!」的な感じなので(笑)。
次回まで時間がまたかかると思いますが、
どうぞよろしくお願い致します♪
いつもありがとうございます!