こちらは有閑倶楽部二次創作小説ブログとオリジナル小説ブログです。 日々の出来事もつぶやいています。 原作者・出版社とは一切無関係です。 誹謗中傷・作品の無断転載は禁止です。 管理人の文章やブログスタイルが合わない方はご遠慮下さい。不快と感じたコメントは削除致します。
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その本を購入したのは15年位前で、
その間に熟読したのはたった2回。
哀しい記憶が呼び起こされ、今回は有閑風に描いてみました。
あれからどの位の時間が経ったのだろう。
それを数えるのを止めてから、どの位の時間が過ぎて行ったのだろう。
何時の日か考えもしなかった奇跡が起こって、「戻れる」時が来るかも知れない。
そう思った瞬間、それはいつも同じで、彼女の目から温かな滴が流れた。
横たわるベッド。
幾度と無く彼女の滴を吸収した枕が、悲しみさえも吸収するかのようにその後を無くした。
終わったのだ。
全く違った生活を受け入れていかなくてはいけないと言い聞かせてきた。
けれど、彼女が浅い眠りから覚める時、決して消える事が無いあの時の記憶が呼び起こされた。
『一度離れた気持ちは、もう元に戻る事は無いよ』
野梨子も辛いだろうけれど・・・
『お願い、私から去らないで!』
『ダメだよ。もう、ダメなんだ』
彼女は嗚咽が上がるのを感じ、両手で口元を押さえた。
どんなに請い願っても、やり直す事は出来ないのだ。
あの人が、そう言ったのだから。
窓の方へ身体を横たえたまま、ぼんやりと外を眺める。
決して引く事のないカーテンが、少し開いた窓から入り込む風に流れた。
「気分はどう?」
夜通し開け放していたドアから友人の声が背中に聞こえる。
なかなかベッドから出て来ない彼女を、毎朝同じように声をかけるのだ。
「大分良いんですのよ。けれど、ちょっと身体が思うように動かなくなるんですの」
「コーヒーを淹れたんだけれど、一緒に飲もうと思って。持って来る?」
「着替えて、下りますわ」
待ってる、と言って部屋を離れる足音が、彼女を少しだけ安心させた。
あれからどの位の時間が過ぎ去ったのか考えないようにしているのだが、
いつまでもこうして友人に甘えてばかりもいられない。
彼女は無意識にスタンドの横の携帯電話を手に取ると、何も受信されていない事に心を痛めた。
毎朝の繰り返し。
それがまた、彼女を涙ぐませる。
重い身体を引きずるように、ベッドから離れた。
階下に下りると海に面したリビングに、朝の光とコーヒーの香りが充満している。
窓際に立つ友人の背中に違う陰を追って近付く。
「おはよ。今、コーヒー持って来る」
振り返って言う友人の腕を咄嗟に取る。
「コーヒーは私が。悠理」
透き通るような茶色の大きな瞳を覗き込む。
「何?」
違う。違うのだ。
友人に・・・悠理にあの人の陰を追っても意味は無い。
けれど時々、その仕草や表情、言葉の使い方が余りにも似ていて野梨子を混乱させた。
「いいえ。コーヒーを持って来ますわ」
夏休みが始まる前からずっと、野梨子は剣菱家が所有する海辺の別荘にいた。
悠理も一緒に。
時々訪れる仲間達の中に一人だけ姿を現さないと言う事が無ければ、全く同じ夏。
いつもの夏と、同じ。
けれど・・・
あの人は夏になっても、その季節が過ぎ去っても、野梨子の前に現れる事はない。
1. 新作ですね!
悠理に似てるあの人。
うーん・・・気になります!続き、待ってまーす!
じんじゃーさま
そうですね、野梨子と悠理って女性同士なのにしっくりときますね!
やはり美童よりも悠理の方が、
野梨子の傍にいる役を描きやすいと感じました。
さて、悩みながらストーリーを考えるとします(笑)。
ありがとうございます。